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    米国メーデー/最賃15ドル法案が焦点に/JILPT調査部 山崎憲

     いまから6年と少し前の2012年11月29日、ファストフードとファストファッションで働く労働者の賃上げを求める運動が米国の主要都市で始まった。時給7・25ドル、日本円で800円ほどの賃金(最低賃金)では家族を養い、子どもに教育の機会を与え、年老いた親の介護にかかる費用を負担することができないからだ。

     この運動は最賃について、生存できる最低限を保障し、人間らしい生活を送るための糧となるべきものと、定義を変える契機となった。

     この流れを受ける形で14年4月、ホワイトハウスは連邦議会に対して最賃を7・25ドルから10・10ドルへ引き上げるように促す声明を出した。ドイツでは15年に最低賃金制度を歴史上はじめて導入。英国では16年に生活賃金を新設し、20年までに最賃を平均賃金の6割相当に引き上げることとした。米国発の運動が世界各地へと波及したのだ。

     

    ●労働運動が変化した

     

     こうした変化がより具体的な形となったのが、15年4月15日に全米236都市で展開されたファイト・フォー・フィフティーン運動(15ドル運動)である。最賃を15ドルへ引き上げることを求め、今年の1月には「賃金引上げ法案(Raise the Wage Act)」として結実した。

     10・10ドルを議論していた連邦議会では、運動に押される形で時給15ドルが焦点になったのだ。最賃引き上げは労働問題を超えて、家族や地域コミュニティー、社会、文化を支えるための運動へと姿を変えつつある。もはや労働組合員だけを対象とした運動ではない。ファストフードやファストファッションで働く労働者の多くは組合員ではない。15ドル運動も同様だ。こうした運動を支持することで組合員が増えるという保証はないが、それでも労働組合は中心にいる。労働運動は米国で明らかに変化したのだ。

     

    ●地域や世界とも連携

     

     15ドル運動は米国だけでなく、200以上の世界主要都市で現在も展開中だ。米国はメーデー発祥の地でありながら、近年までそのことが大きく取り上げられることはなかった。この状況は1999年に変わった。移民労働者が自らの権利を求めて5月1日に運動を展開するようになったのである。

     今年も主要都市で労働と生活、地域コミュニティーの接点としてのメーデーが5月1日に行われる。それは米国だけでなく世界と連携する。日本はどうか。(労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員)