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    国の標準生計費の根拠問う/自民最賃議連/「厚労省はデータ開示を」

     全国一律最賃制の実現を目指す自民党議員連盟の会合が4月11日あり、最賃の改定審議の際に検討される国の標準生計費について、算出根拠を示すよう議員が踏み込む場面があった。最賃引き上げの重しとなっている標準生計費の算出方法について〃秘密のベール〃が剥がされるのではないかと関係者は期待する。

     全国一律の公定価格である医療・福祉職の賃金水準が、最賃額と強い相関があることにも関心が寄せられた。

     この日のヒアリング対象は、全労連と中澤秀一静岡県立大学短期大学部准教授。中澤氏が全国各地で手掛けている生計費調査の手法を説明した。何とか生命を維持できる水準ではなく、「健康で文化的な生活」を送れる最低限の生計費を算出する試みだ。都市、地方にかかわらず、法定労働時間の勤務でおおむね時給1300円程度が必要との結果が出ている。

     議員らが強い関心を示す中、厚生労働省担当者は国の標準生計費を最賃の改定審議に提出していると説明した。標準生計費は、人事院が毎年、総務省の家計調査を基に算出。昨年は単身世帯が11万6930円、4人世帯で22万2350円と低い水準となっている。

     中澤准教授は、標準生計費の算出に関するデータが非公表とされ、家計調査からも再現できない検証不可能な代物であると指摘。山本幸三議連幹事長が「国会議員に秘密にする理由などあるか」と一喝し、根拠となるデータを示すよう迫った。厚労省側の対応が注目される。

     

    ●公務非正規の賃上げを

     

     併せて議員らが強い関心を示したのが、都道府県ごとの最賃額と所定内賃金の相関だ。最賃が高い地方ほど賃金は高く、低い地方は賃金が低い。特に、診療報酬や介護報酬など国の公定価格で労務費単価が決められている医療・福祉職場で、同じ相関が見られることについて、務台俊介議連事務局長が「非常に問題だ」と発言、同省に要因分析を求めた。

     全労連の担当者が典型的な低賃金職場として(1)コンビニ(2)福祉(3)自治体非正規――を挙げると、町長経験者である衛藤征士郎議連会長は「給与を上げようとしてもラスパイレス指数で国は抑えてくる。そうすると町の企業(の賃金)も下がる。逆に地方の公務員が引っ張り、賃金を上げないと国際競争に勝てない」と述べ、最賃引き上げの意義を強調した。

     

    〈写真〉自民最賃議連の議員らは「デフレでなくなった今がチャンス」と全国一律最賃制実現を訴えた(4月11日、国会)