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    無理筋の主張続ける業界側/解決模索する港湾労組

     港湾関係の労組でつくる全国港湾(1万6千人)と港運同盟(1200人)は4月14、15の両日、全国の港で48時間ストを実施した。平日を含むストは22年ぶり。最大の争点は、37年間続けてきた最低賃金についての産別労使協定の改定を、業界団体である日本港運協会(日港協)が4年前に突然渋り始め、その後も拒否し続けていることだ。「独占禁止法に抵触するおそれがある」という無理筋の理由で、争議解決に背を向け続けている。

     「30年以上続けてきた産別最賃協定の改定をなぜ突然拒むのか」。スト実施後の16日に開いた会見で、全国港湾の糸谷欽一郎委員長は業界側の頑なな態度に疑問を呈した。

     港湾産別労使の最賃協定は2015年に16万4千円(時給換算約1010円)で締結したのを最後に日港協は改定を拒否している。

     今年2月に示された中央労働委員会のあっせん案(図)では、「(カルテルなど)独占禁止法上の問題とはならない」とし、真摯(しんし)な協議を求めた。使用者側を含む委員からの提案だ。国土交通省の検討会が昨年まとめた報告書でも「労働基準法上の労働者の行為は独禁法の問題にならない」と述べている。

     だが、日港協は頑なだ。中労委のあっせん案の受諾を拒否。全国港湾によると、業界側は「あっせん委員の一方的な解釈」と、歯牙にもかけない態度だという。

     港湾事業者は船と陸の間の積荷の輸送を行う。中小業者が多く、1990年代の規制緩和以降、大手企業をはじめとする荷主、船会社からの価格引き下げ圧力に常に直面してきた。「産別最賃協定は業界の秩序と労働条件を守る支えなのになぜ」というのが組合側の率直な疑問でもある。

     16日現在、日港協に歩み寄りがなければ、5月連休中に9日間のストに入らざるを得ない。組合側は国土交通省に解決への協力を求めようとしたが、所管する、同省の港湾経済課長は「不在」を理由に面会に応じないという。

     糸谷委員長はこの問題をめぐる国交省の対応は終始後ろ向きだったと述べ、「私たちはストライキありきではない。国交省は解決に向けた努力をすべきではないか」と述べ、対応を求めた。