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    〈グローバル化の陰で〉(4)/下請け労働者を使い捨て/ユニクロ柳井社長の富の秘密

     2019年版「フォーブス」で富豪ランキング日本一に返り咲いたファーストリテイリング社の柳井正社長。メインブランドはユニクロだ。彼が誇る栄華の裏では、使い捨てられた元労働者らが悲痛な声を上げていた。

     

    ●突然の発注ストップ

     

     インドネシアの首都ジャカルタから1時間ほどの郊外にある工場群。かつてジャバ・ガーミンド社(JG社)がユニクロの下請け工場を稼動させていた。12年からユニクロのセーターなどを受注していたが、14年末に契約を打ち切られ、翌年4月に倒産している。

     JG社は1992年から縫製工場を営んできた現地企業であり、ピーク時には6千人の労働者を抱えていた。倒産時には少なくても2千人が働いていたとされ、その8割は女性だった。

     労働者は、14年末の発注ストップ以降、倒産するまでの約4カ月間、給料が一銭も支払われなかったという。退職金も一切もらえないまま全員が職を失ってしまった。その後、未払い給与は17年になってようやく払い込まれたが、退職金やその他の手当(総額約6億円)は今も支払われていない。

     職を失った労働者は、路上の簡易屋台で飲食物を販売したり、別の工場から廃棄されたアウトレット品を修繕して販売したりして、わずかながらでも収入を得るための工夫をしてきた。しかし、最低賃金しか支払われていなかった工場時代と比較しても、半分程度の収入でしかない。

     1日に1食抜く、子どもの教育費を削る、一切の娯楽をなくすなど、生活の質をギリギリまで切り下げ、借金を繰り返しながらようやく暮らしを維持している。未払いの退職金を回収すべく今日も闘いを続けている。

     

    ●倒産の責任は誰に?

     

     ここで問題になるのが、「JG社の倒産にユニクロは責任があるのか」という問いである。もちろん法的にはJG社経営陣に責任があるのは明らかだ。しかし、ユニクロの発注ストップ直後から給与が支払えないほど運転資金が足りなくなり、その4カ月後に倒産しているのだ。ユニクロが取引を停止したことに倒産の要因の一端があると労働者が認識するのも無理はない。

     しかも、ユニクロの発注を受けるためだけに、ユニクロの指定する「ミシン」を新たに300台導入するなど、膨大な設備投資をしている。運転資金が枯渇(こかつ)したのは、設備投資分が2年間では十分に回収できなかったことも関係しているのではないか。

     

    ●労働条件は悪化した

     

     労働者らがユニクロに怒りの声を上げている理由は、それだけではない。ユニクロがやってきてから労働環境が目に見えて悪化したのである。例えば残業代が支払われないのに、何時間も残業をしなければならなくなった。過労で亡くなった労働者の事例も報告されている。

     労働者はユニクロのために身を粉にして働き、会社側も多額の借金をして設備投資をして後戻りできなくなっていた。にもかかわらず、ユニクロ側はずいぶんとあっさり取引を停止した。倒産に対する責任も一切認めていない。

     このビジネスモデルが、柳井氏の富豪日本一返り咲きの背景に存在するのだ。(アジア太平洋資料センター事務局長 田中滋)