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    〈委託化進む都立高校図書館業務〉中/学校との連携が困難に/元都立高校司書 井上 緑

     民間委託の問題点を具体的に見てみよう。

     

    ●欠員が日常茶飯事?

     

     全日制高校では、1日フルタイム1人+午後1人、定時制がある場合は夜1人の配置が決められている。これを毎月2~4人のシフトを組んで回している。

     委託司書の勤務条件はまちまちだ。週5日フルタイムは少数で、配偶者の扶養控除内で働く人が多く、中にはダブルワークや子育て、介護を抱える人もいる。年度の変わり目は退職や異動で出入りが激しくなり、欠損(欠員)が出やすい。年度途中であっても急な退職や本人・家族の事情でシフトに穴が空くこともしばしばである。

     東京労働局が調査に入った2015年には8校が欠員状態だったことが判明した。これは氷山の一角でしかない。委託が拡大した現在では欠員も日常茶飯事となっている。

     

    ●満たされない資格要件

     

     委託業務の仕様書によれば、委託司書として働くには「司書資格+図書館経験」が必須とされている。ところが、実際には無資格者もまれにいる。通信教育で資格を取っただけで、図書館未経験という人が驚くほど多い。経験者といっても、貸出・返却業務だけだった人も少なくない。

     学校図書館は図書館業務全般に通じていなければならない。正規司書の場合、新規採用研修や地域ごとの定期的な研修、司書同士の交流など切磋琢磨(せっさたくま)する環境が整っているが、委託司書には若干の研修がある程度。レベルの違いは一目瞭然だ。

     

    ●学校の中の孤島

     

     学校図書館は学校の一部だ。学校の教育方針を実現すべく教職員の一員として職員会議に参加したり、関係する校務分掌の会議に出たりして必要な情報を共有し、図書館運営を担う。

     ところが、委託司書は職員ではなく学校内の会議には参加しない。学校の情報もほとんど入らない。提供されるのは年間行事予定表と授業の時間割くらいだ。

     学校にとって委託司書は外部の人である。内部と外部の区別が曖昧になるといろんな問題が発生するので、最低限の接触で済まそうとする。学校の中にあって学校から隔離されたような場所だ。 

     

    ●利用者ニーズつかめず

     

     図書館の要は資料収集と資料提供である。利用者(生徒・教職員)のニーズ(内容・時期・量など)を把握し、適切な選書を提案することが重要だ。生徒の状況や授業の様子、行事、進路状況などを踏まえて選書計画を立てる。教職員や生徒との会話からもニーズをすくいあげていく。

     委託司書の場合、その全てが困難だ。リクエストカードや図書館を利用する授業からわずかな手がかりを得るだけ。修学旅行の情報を入手した時には選書の時期を逸していたこともある。

     図書館だよりや新着図書案内の作成・配布もままならない。50部までは受託会社の負担、それ以上は学校の負担と決められているため、全校生徒に配布せず、教室掲示にとどめる学校も多い。