「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    寄稿/〈委託化進む都立高校図書館業務〉上/直接雇用の文科省方針も無視/元都立高校司書 井上 緑

     都立高校の図書館業務がどんどん民間委託されている。教育への影響を含め、現場は今どうなっているのだろうか。長年、司書として都立高校に勤務し、その後受託会社に雇用されて委託司書を経験した井上緑さんに、実態をレポートしてもらった。

        〇

     東京都は2011年度から都立高校図書館に業務委託制度を導入した。9年目の今年、導入校は123校、全体の3分の2に達している。高校図書館業務を委託化しているのは現在、全国で東京都だけである。

     

    ●委託ありきで推進

     

     かつて都立高校には、定時制を含め全校に正規職員の学校司書が配置されていたが、都は01年に新規採用をストップした。翌02年には学校司書定数を1校1名に削減したため、学校司書不在の時間帯が増え、授業兼務の司書教諭では図書館運営が困難になった。現場の教職員は学校司書の採用再開を強く求めたが、都はそれとは逆に業務委託を強行したのである。

     都は委託に際し(1)司書教諭を中心とした読書推進(2)図書館管理システムの導入(委託によるコスト縮減で経費を回収)(3)利便性を高めるため開館時間・開館日数の拡大――を掲げた。

     これらは全て委託ありきの後づけ理由に他ならない。現場では労働者派遣法違反の指摘をはじめ、さまざまな問題が起きているが、仕様書や契約方式の変更で済ませ、ひたすら委託の定着・拡大にまい進しているのだから。

     「学校司書」は14年の学校図書館法改正で正式に規定された。その後、文部科学省の「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」報告書は、各教育委員会に対し「学校司書として自ら雇用する職員を置くよう努める必要がある」と明記した。都はこれを全く無視し続けているのだ。

     

    ●請負業務の危うさ

     

     都立高校の図書館管理業務の受託会社は、都財務局が行う入札で決まる。複数校を地域別にグループ化した上で、参加希望の業者を指名競争入札にかける仕組みだ。「価格点+技術点」の高い業者が落札する。

     受託会社は司書資格・図書館経験を有する業務従事者(委託司書)を、ほぼ最低賃金並みの給与で雇用する。業務は、委託校共通の「仕様書」と、学校が毎月受託会社に提出する「業務指示書」に基づくことになっている。各校に配置された委託司書は、その学校独自の「図書館マニュアル」と、会社が毎月作成する「業務計画書」に従って日常業務を行う。

     これは請負業務である。派遣業務とは違い、指揮命令するのは学校ではなく受託会社だ。つまり、学校現場では教職員から直接仕事の指示を受けない。それを行えば違法な偽装請負になる。

     15年には内部告発によって東京労働局がある地域を一斉調査し、偽装請負の実態が複数発覚して是正指導を行っている。

     教育現場では日々突発的なことが起き、業務指示書や計画書では間に合わないことが多々ある。

     

    ●授業支援が違法に

     

     請負業務の場合、教職員・生徒の図書委員と委託司書の業務が混在してはいけないことになっている。

     例えば、図書館を利用する授業について、委託司書が直接支援したり、図書委員会活動を指導したりするのは仕様書違反(派遣法違反)となる。

     こうしたことへの理解は不十分と言わざるを得ない。現実には、委託司書を従来通り関連授業に関わらせるケースや、逆に委託司書の活用を控える事態も見られる。