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    〈日米地位協定で日弁連シンポ〉下/米国は日本以外で主権を尊重/伊勢崎東京外大教授が指摘

     日米地位協定を検証する日本弁護士連合会主催のシンポジウム(5月11日)では、国際紛争の実情に詳しい伊勢崎賢治東京外国語大学教授が「世界各国の地位協定を見ると、米国と法的に対等な内容になってきている」と指摘した。

     伊勢崎教授は、歴史的に地位協定を改定してきたドイツやイタリアの例だけでなく、近年新たに結ばれた協定を調べれば一目瞭然だと述べた。

     「例えばアフガニスタン。内戦状態は今も続いており、治安維持を米軍に依存しているが、協定の冒頭にはアフガニスタンの主権(尊重)がうたわれている」

     駐留国の主権を尊重せざるを得なくなったのは、米国と旧ソ連による冷戦の終結が理由だという。「共産主義の触手から自国を守ってもらうには米軍の駐留が不可欠というレトリックが、もはや使えなくなったためだ」と説明した。

     いったん撤退させた米軍の駐留を再び認めたフィリピンも同様だとし「要するに、米軍を『居させてあげる』というスタンス。そうでなければ、米軍は外国に基地を置けなくなってきたし、反米感情が強まるのを恐れている」という。

     

    ●時代遅れの日本政府

     

     その上で伊勢崎教授は、日本政府が米国に対して主権を主張できない状況を「時代遅れ」と批判。「両国の対等性を確保した方が、日米関係は安定すると訴えれば、米国は拒否できないのではないか」

     対等性を要求できない日本政府の思考回路をリセットすべきだと述べ、さらに政府だけでなく国民の意識改革も必要と語った。