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    インタビュー/解雇争議解決へ闘い続ける/JAL不当解雇撤回争議団 山口宏弥さん(パイロット団長)

     日本航空(JAL)がパイロット81人と客室乗務員84人の合計165人を「整理解雇」してから8年半。争議団は解決を目指して闘い続けている。5月30日には東京の日本航空本社前で「大包囲行動」を計画。約1年間続いた本社との特別協議が前進しなかったことを踏まえ、あらためて運動を強める契機にしたい考えだ。JAL争議の現状と今後の方向について、パイロット争議団の山口宏弥団長に話を聞いた。

     

    (上)世論の支持と運動強化が必要/5月30日に本社大包囲行動

     ――昨年来の特別協議は争議解決の方向に向かわなかったのですか?

     山口 パイロットについては、2020年に就航予定の格安航空会社(LCC)への応募を認めるとしましたが、応募であって採用ではありません。労働条件も不明です。しかも、被解雇者や希望退職者の多くは既にJAL以外のLCCで働いています。争議団の中では「戻すとしても子会社ではなく、JAL本体が筋だろう」という声が圧倒的でした。応募したい人には試験を受けてもらいましたが、結局、採用はゼロでした。

     ――会社には被解雇者を戻す気がなかった?

     解雇からすでに9年目です。私たちは職場復帰や労使関係の正常化など、現状に即した統一要求(※)を掲げて闘っています。昨年前半には、社長や会長が争議の早期解決の意向を表明しました。それを受けて10回も特別協議が行われてきたのですが、何も解決していません。社長発言が全くほごにされているわけです。経営内部の不統一でもあるのでしょうか。

     昨年5月、特別協議が始まるのを受けて、労働組合の要請で支援共闘の皆さんに街頭での運動を控えてもらいましたが、今年2月末には再開しました。世論の支持と運動がなければ要求は前進しないことが明らかになったと思います。

     ――今後の運動をどう進めますか?

     既に2月以降、各地で宣伝や代理店回りを行い、関東ではキャラバン行動も展開中です。5月30日の大包囲行動は6月の株主総会をにらんだ取り組みで、一つのヤマ場と位置付けています。原点に戻って、運動を再構築していきます。

     

    〈用語解説〉統一要求

     

     争議団の団員が所属する3労組(機長組合、乗員組合、キャビンクルーユニオン)が2016年の年末闘争で確認しました。(1)被解雇者全員の職場復帰(2)希望退職者の再雇用(3)被解雇組合員が被った不利益・負担の補填(ほてん)(4)労使関係の正常化と安全運行の推進――などを求めています。

     

    (下)労使関係の正常化こそ/会社に国際ルール順守求める

     ――JAL争議の原点とは何ですか?

     日本航空は経営破綻を利用して、ベテラン乗務員を解雇しました。特に航空界では国際的にも例のない暴挙です。私たちが納得できない理由は主に四つあります。

     第一に、2010年11月、整理解雇に反対する組合のスト権投票に対する管財人(弁護士)の「うそと脅し」が不当労働行為と認定され、最高裁から憲法28条(団結権)侵害と断罪されたことです。つまり、整理解雇の手続きが憲法違反の下で行われたということです。

     第二は、経営破綻の責任は現場労働者には全くないということです。本業以外のホテル・リゾート開発事業の失敗や、政府の圧力による大量のジャンボ機購入(113機)などの「放漫経営」の責任が全く問われていません。

     第三は、解雇当時、希望退職で人員削減目標が超過達成していたにもかかわらず、解雇を強行したことです。しかも、現在はパイロット不足、客室乗務員は整理解雇後4千人も新規採用をしています。

     第四には、莫大(ばくだい)な利益を上げながら被解雇者を戻そうとしていないことです。解雇以降、日本航空は毎年1600億円以上もの営業利益を上げ続けています。

     当時、日航会長になった稲盛和夫氏は記者会見で「(165人の解雇は)経営上、必要のない解雇だった」と認めていました。

     ――皆さんを戻さないのはどうしてですか?

     近年深刻な人手不足ですから、人員削減が目標であったなら、私たちはすでに職場復帰をしているわけです。解雇の狙いは「ものを言う労働者」を排除して、労働組合の影響力を弱めたかったからです。結果、ベテラン乗務員を切り捨てたことで、航空機の安全を守る上で大切な4要素である「知識、技術、経験、チームワーク」の一つである「経験」を切り捨てたわけです。

     ベテラン軽視は安全に逆行するものです。

     ――国際労働機関(ILO)からは、解決に向けた協議を行うよう、何度も勧告されていますね

     ILO勧告を4回受けています。JALは東京五輪・パラリンピックの公式スポンサー企業です。五輪組織委員会はスポンサー企業に対して人権、労働、環境などの分野で国際ルールの順守を求めています。JALは公共輸送事業者ですから率先してルールを順守することが求められます。

     私たちは組織委員会にも働きかけたいと考えています。安全運航の基盤は現場にあります。JALが争議を早期に全面解決することは、労使の信頼関係の回復にとどまらず、利用者国民からの信頼にもつながるものです。

     

    〈用語解説〉JAL争議

     

     2010年1月に経営破綻したJALが、再建を進める中で同年大みそかに行った整理解雇を不当として、被解雇者が職場復帰を求めている争議。15年2月には最高裁が解雇を有効と判断しましたが、会社によるスト権確立への支配介入が不当労働行為として断罪(16年9月の最高裁判決)されています。裁判後はILO勧告などを踏まえ、職場復帰を求め続けています。