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    「軍隊より暮らしを優先」/ロベルト・サモラ弁護士/コスタリカ憲法の意義を語る

     1949年の憲法改正で常備軍を廃止した中米のコスタリカ。その国で平和運動に関わってきたロベルト・サモラ弁護士(38)が6月8日、都内で講演し「平和を実現するには軍隊より暮らしと人権が大事」と語った。サモラ氏は政府を相手取った訴訟で「平和は権利である」との判決を勝ち取った経験も持つ。講演会は、市民グループ「コスタリカに学ぶ会」や日本国際法律家協会などが主催し、約200人が参加した。

     

    〈写真〉講演するサモラ氏

     

    上・83年に永世非武装中立を宣言

     コスタリカ憲法は常備軍の保持を禁止している。日本国憲法9条の非武装規定に通じる内容だ。事実上の軍隊である自衛隊のような組織もなく、自衛権行使が必要な場合のみ再軍備できる仕組みである。

     サモラ氏は「1948年の革命を経てまず手を付けたのが憲法改正。民主主義にとって軍隊は危険であり、やめようと決めた。軍備に使うお金を教育と衛生(医療・福祉)に回し、人々が平等で平和に暮らせるようにと、電力、電話、水道、銀行、学校を国営にした」と語った。

     戦争と軍隊をなくすだけでは平和な社会にならないためで、「権利が保障されて一人一人が尊重され、生活に必要なものが手に入る状態こそが必要だ」とし、憲法改正はその具体化だったという。

     コスタリカで注目すべき政策として、常備軍禁止と併せて永世非武装中立宣言(83年)を挙げた。当時、隣国のニカラグアの左派政権を威嚇したい米レーガン政権が、コスタリカ領内への米軍基地建設を要請してきた。「米国は『認めなければ経済支援を打ち切る』と脅してきたが、モンヘ大統領は国際法を盾にこれを拒否した。その際に出されたのが永世中立宣言だ」

     宣言は(1)戦争反対(2)意見や政策の違いを克服する手段としての暴力の否定(3)戦争は最終的には不合理だとの確信(4)戦争は政治と外交が失敗した結果(5)平和を目指すのは私たちの義務――という内容。サモラ氏は「平和を目指すことが唯一の道であり、私たちはそのことに誇りを持っている」と語った。

     

    下・国相手の違憲訴訟に2度勝利

     サモラ氏は政府を相手取って2度、裁判(憲法裁判所)を闘った経験がある。

     最初は2003年。パチェコ大統領が米国の始めたイラク戦争に支持表明したことを違憲だと訴えた。当時は法学部の学生。「石油利権のための戦争であり、こんな野蛮なことが許されるのかと頭にきた」と振り返った。

     学生の中には、政府がイラク戦争を支持しないと、米国へのビザが出なくなるのでは、と心配する声もあった。サモラ氏は「たった一枚のビザ、旅行のことでコスタリカの誇らしい歴史を失ってもいいのか」と憤り、即提訴したという。

     04年9月の判決で違憲判断を勝ち取った。だが、判決は平和が権利であるとまでは踏み込まず、サモラ氏には不満が残った。

     その不満を解消できたのが、08年に憲法裁判所が出した判決だ。今度は弁護士として政府の原発建設計画を憲法違反と訴えた。判決は「平和は権利である」と明確に判断。原発との共存は平和に暮らす権利を脅かすと結論付けたのである。

     

    〈メモ〉不断の努力が必要

     

     講演後の質疑応答でサモラ氏は、コスタリカ政治の現状にも触れた。相次ぐ政権の汚職事件、深刻化する格差の拡大、多様性を反映できない2大政党制の弊害といった負の側面についてだ。

     立派な憲法の存在が、自動的に立派な政治を保障するわけではないということだろう。求められるのは、憲法を守り具体化する不断の努力。サモラ氏が挑んだ裁判闘争もその一環だったのではないか。

     コスタリカ同様、立派な憲法を持つ日本国民にとっても教訓にしたい話である(伊藤篤)