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    〈インタビュー/どうする? 最低賃金〉(3)/まずは高卒初任給への到達を/出村良平連合北海道会長

     連合北海道は近年、道内の自治体議会で最賃の大幅引き上げを求める意見書採択の取り組みを展開している。改定審議では高卒初任給平均への到達をめざし、3%以上の大幅引き上げを求める構えだ。出村良平会長は「(生活に)自動車が必要な事情を考えれば地域間格差は大き過ぎる」とし、全国一律制にも理解を示す。

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     ――意見書採択の取り組みの経緯と狙いは?

     出村 意見書は最賃の大幅引き上げ、道内高卒初任給平均958円を超えること、キャリアアップ助成金の活用促進など中小企業支援の充実――が柱。昨年は53道市町村で採択された。採択数は増えている。

     北海道では労働者の3分の1が最賃(835円)に張り付いている。非正規労働者は最賃引き上げで賃金が上がる。そういう実態に着目し、引き上げの機運を高めようと取り組んだ。

     ――人手不足でも賃金は上がらない?

     人手不足といわれるが、それが賃金を上げる圧力になっているかというと、難しい。本来ならば賃金が上がりそうなものだが、サービス業が多いせいかそう簡単には上がらない。

     ――低い最賃の弊害は?

     貧困の問題ですね。特に子どもの貧困。格差が埋まらない状況が続いている。だから消費も上向かず、経済的にいい循環ができ切れていない。

     ――現行の最賃は生計費を満たしている?

     満たしていない。北海道では自動車は必需品。付随する経費がかさむ。最低生計費を示す連合のリビングウェイジでも、自動車の有無によって水準は大きく変わる。都市部よりも割高になるのではないか(表)。そう考えると、今の地域間格差は大きすぎる。

     ――全国一律制の議論も浮上しています

     人口流出問題の解決や、地方活性化を考えると一律にした方がいいと思う。諸外国を見ても日本のような国土の狭い国で、地域別最賃を採用している国は少ない。北海道でも、東京を中心に首都圏近郊に若者が流出している。

     ただ、段階論でいえば、まずはC、Dランク道県の底上げだ。「全国一律」はスローガンとしてはあり得るが、現状ではそれを言ったところでどうにかなるとは考えにくい。公労使の3者構成の審議会で、使用者側が反対しているのに、いきなり一律と言っても進まないだろう。まずは少しでも改善を、ということになる。

     

     ――中小支援は?

     今あるキャリアアップ助成金などの誘導策を充実させること。適正取引の確保など、国が音頭を取っていく必要がある。

     ――今年の改定は

     昨年を上回る改定を訴えていく。高卒初任給の道内平均にできるだけ早期に到達するための大幅引き上げを求めたい。特にここ2年ほどは灯油代が高く、皆、節約を強いられている。北海道は10月ごろから、5月連休が終わってもストーブをたいているので切実だ。そのうえ10月には消費税増税が待ち受けている。3%引き上げでは足りない。

     ――昨年、多くの地方で中央最賃審議会の目安を超えたのは、地方からの異議申し立てが影響したのでは?

     まさにそうだと思う。北海道も頑張ったが、そうはならなかった。この2年ぐらい使用者側が反対し、公益委員が目安通りの数字を示して収める形になっている。中賃の目安が決まれば全て決まってしまう感がある。私見だが、目安は不要ではないかとさえ思う。