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    ヘイトスピーチに刑事罰/川崎市の差別禁止条例素案/市民ら「先駆的」と評価

     かわさき市民ネットワークは7月4日、川崎市が進める差別撤廃条例素案の学習会を市内で開き、120人が参加した。同ネットワークは、在日コリアンへのヘイト(憎悪)スピーチが激化した2016年1月に発足し、ヘイト根絶を訴えて市や議会に要請を重ねてきた。川崎市は、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(仮称)」素案を6月24日に公表。全国で初めて違反行為に対し、50万円以下の罰金を盛り込み、注目を集めている。

     ヘイト問題に詳しい神原元弁護士は、素案の特徴を(1)人権全般を見据えて不当な差別を広く禁止(2)不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)を禁止(3)不当な差別的言動に対し刑事罰――の3点と分析した。「差別には人種や性自認などいろいろな種類があるが、何人(なんぴと)たりとも不当な差別的扱いをしてはならないと言いきり、他の条例と比較してもかなり先駆的な内容」と評価した。その上で「禁止ならば、法に抵触し、民事不法行為の損害賠償請求や差し止めの根拠になる。あいまいな表現に後退させてはならない」と強調した。

     素案によると、日本以外の外出身者に対して差別的言動を行った場合、3回目の違反行為に対し、刑事罰を科す仕組みだ(図)。ヘイトが発生した場で即時に制止する効力はない。手続きに必要な証拠収集や人物の特定を捜査権のない市の職員が行うのかなど、実務上の課題もあるという。

     「自治体の条例だけで差別をなくすのは無理。国レベルで包括的な差別禁止法が必要だ。今回の条例で国の法整備も促進されるだろう」と述べ、実効性を高めるためにも、8日に始まるパブリックコメントに意見を送るよう呼びかけた。

     在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さんは、ツイッターによる数百件の脅迫や、勤務先に害虫の死骸を送りつけられるなど、ヘイト攻撃を受けてきた。「市の担当者は3年半前、何がヘイトかわからない、どっちもどっちだと言っていた。その市が、議会で『(ヘイトスピーチは)もはや教育や啓発の限界を超えている。罰則規定でなくしていく』と述べたのは心強い」と評価。今度は市の決意を市民もパブコメなどで支え、応援する番だと訴えた。

     

    ●辛淑玉さんがメッセージ

     

     のりこえネット共同代表でドイツ在住の辛淑玉さんもメッセージを寄せた。

        〇

     今回の川崎市の条例づくりに関して、ドイツでは驚きを持って語られています。それは、今までヘイトを野放しにしてきて、罰則一つ無かったという事実に対してです。

     ヘイトは心の殺人といわれますが、ヨーロッパの認識は、ヘイトは「人を殺すハードルを下げる、もっとも簡便な装置」と認識されています。だからこそ、徹底的にあらがうし、犯罪として扱い、法律も厳しいのです。大量殺りくのベースには、いつもヘイト(差別扇動)があったからです。

     もうすでに、私たちは、十分に打たれました。助けてという声を上げることも「怖い」のです。力を貸してください。