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    「より早期に千円」諮問/中央最賃審で審議スタート/骨太方針に「配意」求める

     2019年度の地域別最賃改定を審議する中央最低賃金審議会が7月4日開かれ、引き上げ目安を決める議論が始まった。根本匠厚生労働相が諮問文を読み上げ、より早期に「全国加重平均千円」実現への一歩となるよう審議を求めた。

     藤村博之会長(法政大学大学院教授)は「最低賃金が今、大変注目されている。日本経済において、最低賃金が占める役割は大変大きくなっている」とあいさつした。

     今年は根本匠厚生労働大臣が出席した。大臣の出席は16年以来3年ぶり。

     根本大臣は、骨太方針が「より早期に全国加重平均が千円になることを目指す」と明記した点に触れ「最低賃金を含めた賃金引き上げを通じて消費の拡大を図る必要がある」と語った。

     諮問文は、「地域間格差にも配慮」「下請け事業者による労務費上昇の取引価格への転嫁の円滑化」を盛り込んだ骨太方針などに「配意」した審議を求めている。

     その後、目安小委員会が開かれたが、藤村会長の提起により非公開とされた。参院選後の7月22日に第2回を予定。目安を決めるとみられる第4回小委員会は30日に開かれる見通し。

     16年同様、参院選による政治的影響を受けないための日程設定だとみられる。

     

    ●地域間の金額差を意識

     

     同日、厚生労働省が記者向けの説明を行った。骨太方針に地域間格差への配慮が盛り込まれたことについて担当官は「(最賃の目安区分であるA~Dランク間の)金額の開きについては問題意識を持っている」と説明した。大都市をはじめとするAランク区分の引き上げ目安が毎年、C、Dランクを上回り、地域間格差を拡大させてきた流れを転換できるかが注目される。

     骨太方針では、日本の最賃が先進国との比較で初めて「低い水準に留(とど)まる」と現状を認めた。その上で、その理由の分析と「最低賃金のあり方について引き続き検討する」とした。

     この分析と検討は厚労省が今後、中賃審議とは別に行うという。時期は未定。ただ、同担当官は「最賃のあり方」の検討について、現行制度について言及したものではなく、あくまで金額水準に限定したものだと説明している。

     

    〈写真〉厚生労働大臣の中央最低賃金審議会出席は3年ぶり。「より早期に全国平均千円」を繰り返し述べた(7月4日、都内)

     

    大幅引き上げアピール/中賃スタートで労組

     2019年度の地域別最低賃金の改定審議が始まった7月4日、非連合の労組の組合員らが厚生労働省前で、「今すぐ千円、1500円の実現」を訴えた。

     全労連の黒澤幸一事務局次長は、全労連推薦の最賃審議会委員候補が全て採用されなかったことに抗議し、真剣な改定審議を行うよう訴えた。全国で展開している最低生計費調査に触れ「月額22万~24万円、時給にして1400~1600円が必要。これぐらいないと、8時間フルタイムで働いても安心して暮らすことができない」と指摘した。

     全労協系の労組が中心の「最低賃金大幅引き上げキャンペーン」からは、全労協全国一般の渡辺啓二書記長が「地域間格差が224円もある。こんなことがあっていいのか。県境を越えて人が流出している。全国一律を断固要求する」と訴えた。

     参加者からは、最賃の改定審議が非公開とされていることについて「生活に関わる最賃の改定審議を密室で行うべきではない」との声も上がった。

     

    〈写真〉最賃の大幅引き上げを求める労組メンバーら(7月4日、都内)