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    SEの就労環境改善を/いの健などの研究会/提言とチェックリストを発表

     働くもののいのちと健康を守る全国センター(いの健)と電算機関連労働組合協議会(電算労)は7月3日、情報サービス産業の就労環境の健全化に向けた提言を発表した。厚生労働省や業界団体などに対し、長時間過重労働に苦しむシステムエンジニア(SE)の働き方を改善し、関係業界や企業に法令を順守させるよう求めている。

     脳・心臓疾患と精神疾患の労災申請件数も多い業種だ。いの健は2013年5月に「SE労働と健康研究会」を発足させ、電算労を中心にSEの労働実態を調査し、過労死遺族や弁護士から聞き取りを行った。

     健康被害や過労死の要因として(1)発注企業の都合による複数回の仕様変更(2)納期厳守(3)技術者不足(4)スキルと業務のミスマッチ――を指摘。その結果、SE労働者が精神的に追い込まれ、うつ病などの精神疾患の発症や過労死に至るケースがあると分析した。

     研究会会長を務める医師の田村昭彦氏(九州社会医学研究所所長)は、調査を基に作成した「SEブラックプロジェクトチェック10項目」(表)を紹介。「どのようなプロジェクトで働くと健康を害するか。(偽装請負などの)違法雇用や人員不足などの項目を設定した。SE労働者は何が問題か気付いてほしい」と語った。

     労働時間管理や納期の調整が困難な背景には、多重下請け、多重派遣の構造があるという。電算労の横山南人事務局長は「2015年の派遣法改正で、SEに多い、常用雇用の特定派遣が廃止され、(規制の緩い)届出制から許可制に一本化されたが、対応せずに請負契約へ切り替え、偽装請負が増えているのでは」と懸念を示した。多重構造をなくすために、公的なマッチングシステムの構築が必要と強調した。

     

    ●少なくない精神疾患

     

     電算労のアンケート調査によると、26%がプロジェクトの繁忙時期に月80時間以上の残業をしているという。長時間労働のために4人に1人が「いつも疲れている」と訴え、体に不調がないと答えた人は20%にとどまった。

     元SEの男性(33)は、IT企業に入社すると、研修もないまま、未経験でプロジェクトを任された。2年目に担当したシステム開発でうつ病を発症。残業は半年間で月平均140時間に上った。「精神疾患を抱えながら働いている人が多い」と語り、SEの労働環境の改善を呼びかけた。

     

    〈写真〉多重下請け構造の問題点を指摘する横山電算労事務局長(左)(7月3日、都内)