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    沖縄レポート/安倍1強終わりにできるか/盛り上がらない参院選だが…

     参院選は全国的にも盛り上がりに欠けるようだ。1人区での野党共闘はできたものの、野党各党に迫力がない。それでも安倍1強政治を終わらせるということにつながってほしい。

     

    ●事実上の一騎打ち

     

     沖縄選挙区もまったく盛り上がらない。4人が立候補しており、自民党公認で公明党と日本維新の会沖縄県総支部推薦の安里繁信候補(49)と「オール沖縄」勢力が支援する高良鉄美候補(65)の事実上の一騎打ちである。

     安里氏は沖縄から初めて日本青年会議所(JC)の会頭を務めた。沖縄の若きホープとして期待され、仲井真弘多知事が県の外郭団体、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の会長に据えて育てようとした人物である。地元民放テレビの番組を持ち、若年層にも一定の知名度がある。

     高良氏は憲法学者で琉球大学名誉教授。沖縄県憲法普及協議会会長のほかオール沖縄会議の共同代表も務めてきた。県議会傍聴で帽子着用が認められなかった経験から、「知る権利」の重要性を訴えるため公の場では常に帽子姿だった。今回の選挙では権力の場を目指すことになるとして帽子をかぶらずに選挙を戦っている。

     

    ●それぞれの候補者は

     

     盛り上がらない要因のうち、候補者にかかわる部分だけを見てみたい。

     県議や市町村長などを経ずに知事や国会議員を目指す例は沖縄では少ない。安里氏は高卒で父親が創業した運送会社に入り、さまざまなチャレンジをして、企業グループを築いた(その後早稲田大大学院を修了)。OCVBでは内紛を起こし、お騒がせイメージも残っている。昨年の知事選で出馬表明し、自民党に支持を要請。選挙事務所を構えるまでしたが、佐喜真淳前宜野湾市長への一本化に応じた。その条件が今回の参院選公認だとされており、駆け引きで候補者になった印象がある。これらの事情のためか、今回は県議、市議の動きも弱いようだ。

     もう一つ問題がある。安里氏は「県民投票の結果から辺野古容認とは口が裂けても言えない」といい、政策発表で辺野古容認を封印した。公明党からは評価されたが、自民党からは反発もある。「辺野古容認」を言わない自民党公認候補が有権者にどう受け止められるのか興味深い。

     

    ●投票率低下を危惧

     

     高良陣営が盛り上がらないのは、候補の選出過程で批判を受けたことが影響している。もともとこの議席は沖縄の土着政党・沖縄社会大衆党(社大党)の委員長も務めた糸数慶子氏(71)が守り続けてきた。しかし、党内の確執を背景に参院選を前に党執行部から引退を勧告された。糸数氏は反発したものの、社大党は高良氏を擁立し、オール沖縄が支持することになった。糸数氏は「分裂して喜ぶのは安倍政権」として高良氏支援を表明。今回の選挙戦でも前面に立っている。

     政党だけによる一方的な候補者選びに反発した市民が「県民の声100人委員会」を発足させ、記者会見、署名運動、シンポジウムなどの活動を展開した。メンバーは玉城デニー知事を支持する人たちで、県民投票で中心的役割を果たした人も多い。そのため、今回の選挙では若者や市民のかかわりが目立たなくなっているように感じる。

     投票率の低下が危惧されるが、盛り上がらない選挙であっても、沖縄の民意は改めて明確に示されることになるだろう。(ジャーナリスト 米倉外昭)