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    インタビュー/「安倍政権の責任は重大だ」/暮らせない年金問題/日本年金者組合 金子民夫委員長

     金融庁の金融審議会が「老後生活30年には年金とは別に2千万円必要」という報告書をまとめ、あらためて年金額の低さに社会的な注目が集まった。実際に年金生活者の生活はどうなっているのか、この問題をどう見ているのかについて、全日本年金者組合の金子民夫委員長に聞いた。

     

    ●病気になれば貯金ゼロ

     

     老後生活に2千万円不足というのは、多くの高齢者の実感でしょう。基礎年金だけの人や、厚生年金でも低額の人が大勢います。

     高齢でもパートで働いて不足分を補ったり、貯金を取り崩したりして何とか生活しているのが現状です。私たちの組合員で、マンション暮らしをしている女性がいます。月5万円の年金と、500万円ある貯金から毎月5万円を下ろしています。貯金が底をついたらどうするのか。本人は「あと8年しか生きられない」と言っています。

     多少蓄えがあっても、病気になって無くなったという話もよく聞きます。

     

    ●非正規率4割は異常

     

     年金は2004年の大改悪に加えて、安倍政権による2・5%削減などで引き下げられました。マクロ物価スライドに基づく受給額抑制、介護保険料の天引きなどで目減りしてきたのです。私は、04年以降、月3万円ほど手取り額が減少しました。

     参院選直前には年金問題が論争になったものの、政府・自民党はたくみに争点外しに努め、選挙に影響するのを避け続けました。

     しかし、年金問題は大きな議論にならざるを得ません。今後を考えれば、働く人の約4割が非正規雇用であり、仕事を掛け持ちしないと暮らせないという状態は異常です。年金財源の観点からも正規雇用を増やす必要があります。

     

    ●2・5%削減は違憲だ

     

     私たちは、12年からの2・5%削減を違憲と訴える「年金裁判」を全国で闘っています。

     憲法25条が定める生存権に反しているという主張です。被告の厚生労働省は「生存権というなら生活保護を受ければいいではないか」と言いますが、それは違うでしょう。生活保護法は生活再建と自立支援をセットでうたっています。しかし、仕事もなく、あっても体がきつくなってきた高齢者全てに自立が期待できますか。

     さらに、25条2項には社会福祉と社会保障の向上・増進がうたわれています。生活保護の前に、暮らせる年金を保障すべきということです。

     生存権との関係でもう一つ言いたいのは、マクロ経済スライドが基礎年金を対象にしている点です。基礎年金だけの人、厚生年金で低額の人にも等しく網が被せられる仕組みはおかしいと思います。

     

    ●最低保障年金の創設を

     

     年金者組合として、これまでも基礎年金で月額8万円の最低保障年金制度の創設を求めてきました。現在、第3次提言を議論中です。

     実現のためには新たに18兆円の財源が必要と試算しており、この財源をどう確保するかです。そう簡単な話ではありませんが、国債の早期償還を優先せずに、長期償還の観点に立って財政問題を軟着陸させる方向で運営すること。貧困が進行する一方で、膨大な内部留保をため込んでいる大企業の税負担率を中小企業並みにすることなどを検討しているところです。