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    技能実習制度は強制労働/首都圏移住労働者ユニオン 本多ミヨ子書記長

     

     外国人労働者の個人加盟組合、首都圏移住労働者ユニオンは2010年以降、外国人技能実習制度について国際労働機関(ILO)29号条約が禁じる強制労働に当たるとの申し立て書を毎年提出している。総会での審議には至っていないが、今年の条約勧告適用専門委員会(CEACR)報告書は同制度を「強制労働にも等しい労働権侵害」と厳しく批判し、日本政府に実習生の保護措置を求めた。なぜ、強制労働なのか。本多ミヨ子書記長に話を聞いた。

     

    〈写真〉フィリピン大使館から2017年に贈られた感謝の盾を手にする本多書記長。長年にわたって大使館と協力し、フィリピン人移住労働者の保護や労働問題解決にも奔走してきた

     


    (上)借金で自由を剥奪

     本多 4分野8条約から成るILOの中核的労働基準には、強制労働に関する条約(29号)と強制労働の廃止に関する条約(105号、日本は未批准)の二つが含まれています。非常に重要な位置付けです。ILOは強制労働を(1)処罰の脅しによって働かされていること(2)望まない労働をさせられること――と定義しています。

     実習生は送り出し国で「経費」「手数料」などの借金を抱えて来日します。かつては「補償金」と言われていました。日本の雇用主は、実習生が労働条件で不満を言えば、「帰国させるぞ」と脅し、最大限に借金のしばりを活用します。これが「処罰による脅し」に当たるのです。自国の稼ぎで補償金を返済するのは難しく、事実上、帰国できません。

     借金は送り出し国で発生するため、日本政府が規制しても解決は不可能です。ブローカー、送り出し機関、日本語学校などの利権構造が確立されています。

     「日本で働けば月10万円は仕送りできる。経費の借金も半年程度で返せる」などというブローカーの甘言に乗ってしまったら後戻りはできません。準備段階から実態のない経費を実習生の借金にして、働かせ、三者のもうけにする。前近代的な奴隷的労働の制度です。

     二つ目は実習生自身で雇用主や仕事を変えられない点です。機構に提出する実習計画に沿って、技術を身につけるのが制度の建前。途中で雇用主を変更すると、計画の一貫性がなくなるというのが、政府側の言い分です。そのため、実習生は望まない仕事であっても従事しなくてはならず、自由な職場の異動はできません。外国人技能実習機構が異動を認めるのは、よほどひどい不正行為のケース。雇用主を変更できないことが、実習生の失踪を誘引しています。

     以上の2点は法改正や小手先の施策では解決できない。だからこそ、制度は廃止するしかないのです。

     

    (中)本音は安い労働力活用

    ――入国1年目からの労働基準法適用や機構の設置など、制度は変化してきました。

     一番大きく変わったのは2010年の入管法改正です。労基法などが適用されるようになったものの、評価できません。それまでは、半年の座学を含む研修の1年間は仕事をさせられませんでしたが、入国2カ月目から実習生として働くことが可能になった。勉強して技能を海外に移転するという建前から、安い労働者という本音が出始めたのです。

     その結果、送り出し国には日本語学校が林立しました。規模の大きい送り出し機関は日本語学校を併設しています。来日前に日本語を勉強すれば、研修は1カ月で済みますから、その分早く、長く稼げる。以降、日本語学校を経ないと、実習生になれないような形ができあがり、経費で借金をさせる手法につながりました。

     もう一つ大きく変わったのは、監理団体の責任および管理の下で実習を行うようになった点です。具体的には、受け入れ先の企業への指導や監査報告、実習生の生活支援などです。その結果、専門的な団体が作られるようになり、監理費も高くなりました。雇用主は費用がかかるので、安く働かせようと、最賃割れや家賃の水増しなどをする。この負担も実習生にのしかかってきます。

    ――昨年はILOにどのような申し立てをしたのですか?

     有休取得を希望して強制帰国させられたベトナム人男性の事例や、介護職種の問題点、労基法違反と不正行為の件数、福島での除染作業などを報告しました。条約勧告適用専門委員会は報告書で、労働権侵害と虐待的な労働条件が続いていることを懸念するとした上で、実習生の申告窓口設置のほか、違反などの情報提供を政府に求めました。「強制労働にも等しい」という強い調子の報告書は初めてで、驚きました。制度廃止までがんばりたいですね。

     今年も来年の総会に向けた申し立てを準備しています。入管法改正時の失踪実習生のデータ問題や、新設した特定技能の在留資格で福島第1原発事故の除染作業をさせようとしていたことなど、報告すべき問題はたくさんあります。

     

    (下)支援の仕組みづくりへ

    ――最近は妊娠したベトナム人実習生の支援もされましたね。

     実習生や留学生など、日本で亡くなったベトナム人を供養している日新窟というお寺が都内にあります。新聞報道がきっかけで、3月に訪問し、在日ベトナム仏教信者会会長で尼僧のティック・タム・チーさんらと協力体制を約束しました。

     5月のある日、岡山から女性の実習生が逃げてきたと連絡が入りました。彼女は妊娠していて、強制帰国させられるのではとおびえていたのです。会社に連絡を入れて、お寺で保護し失踪はしていないこと、出産や職場復帰の希望があることなどを告げました。お寺で労働法に関する問題まで対応するのは難しかったのです。

     会社は失踪届けを取り下げましたが、問題は職場復帰などをどうやって地元で支えるか。全労連の岡山県労会議に協力を要請し、会社との交渉に参加してもらいました。その結果、女性を含めたサポートグループを結成し、妊婦健診など、強力な体制につながりました。ナショナルセンターの強みを生かして実現できた共生への一歩です。

    ――本多さんはなぜ、外国人労働者の問題に取り組むのですか?

     組合活動の地域回りで建設事務所を訪ねた時、パンをストーブで温めながら、コーヒーをすすっていたトルコ系労働者の姿が目に入りました。外国人労働者の問題に取り組もうと思った原点です。

     私は中学校卒業と同時にニコンに就職し、事務職に従事しました。仕事が終わると、定時制高校に通う生活です。東京南部の工場地帯で、労働運動が盛んだった時代。若い頃の経験があるからこそ、弱者に寄り添おうと思うのかもしれません。いわば、(工場地帯の)「南部労働者」の精神ですね。