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    労働側が連携し相場を形成/目安上積みのDランク県

     中賃目安に上積みしたDランク各県では、最新の情報を共有し、相場を形成する努力が図られた。地域間格差是正への機運の高まりや、「単独最下位」を避けたい地方の切迫感も作用した。額での格差是正を本格化させるための、効果的な中賃目安を求める声も聞こえる。各県の労働側委員に状況を聞いた。

     西日本では熊本が8月5日、目安2円プラス(28円引き上げ)の「790円」で収束した。労働側は最終盤791円を主張していた。実務上端数切り上げでの求人募集を余儀なくされるため使用者側の抵抗は強く、また、先行した島根、愛媛(ともに26円)が790円としていたこと、直後に控える特定最賃の改定審議への影響なども考慮し、28円でまとめた。

     熊本の労働側委員は「使用者側は具体的データを全く示さない。学生など家計扶助的に働く人がいる中心部よりも、天草、人吉など経済的に厳しい地域ほど人手不足が深刻で、新規求人募集の時給が高いという実例が企業視察で明らかになった。こんな低い最賃では人手不足、後継者不足の解消はできず、外国人労働者も来てくれないなどの主張が響いたのでは」と振り返る。

     政令指定都市を抱える熊本の決定が先導役となり各県が決まっていった。同日、大分が少し遅れて目安プラス2円を決めた。使用者側が目安マイナスを主張する中、労働側は最終盤、目安プラス3円(791円)を主張。好調な経済指標、熊本の決定などから、790円で決着した。

     その2日後の7日、鹿児島が目安プラス3円の29円引き上げ(790円)で収束させ「単独最下位」を返上した。宮崎や鳥取、青森など経済状況が比較的厳しい県より早く決め、ボトムラインを押し上げた形だ。

     特に公益、使用者側が単独最下位を強く意識していたとみられる。労働局長が自ら中賃目安を伝え、影響率の低下など、上積みを促すような説明を行ったという。使用者側も採決で反対したとはいえ「29円は東京より高い上げ幅。従来なら使用者側は公益見解を出すことにさえ強く抵抗したはず」と鹿児島の労働側委員は異例さを指摘する。

     9日には鳥取が目安プラス2円(790円)で答申。人手不足への悪影響から、単独最下位は避けなければならないという認識が公益労使で共有されており「不安はなかった」と同県の労働側委員は話す。

     Dランク県の連携については「愛媛と島根が目安額で790円とし、熊本、大分が追いついたことにより足並みをそろえやすくなった。連合リビングウェイジにできるだけ早く近づけたい」と今後の連携に期待を寄せる。

     東北では山形が5日、目安プラス1円の790円を答申。直前の専門部会では使用者側が退席する一幕もあった(本審の採決には出席)。労働側委員は「使用者側は目安通りなら賛成できると述べていたが、労働側は1円上積みしても影響率が変わらないこと、800円に近づけることを主張し、プラス1円の公益見解が示された」と話す。

     中賃目安がC・Dランク同額だったことが、都市部である宮城との格差是正を主張するうえで効果があったとも語る。

     山形の決着後、5日が答申予定日だった秋田が、同日の専門部会で決着せず、予備日の7日に審議を延期。岩手では7日、熊本、大分、鹿児島の改定状況を踏まえ、目安プラス2円の公益案(28円・790円)が示され、北東北3県の先陣を切る。その後、秋田、青森が28円・790円で続いた。

     各県の労働側委員が強調するのが、Dランク県どうしの連携だ。会員制交流サイト「LINE」で逐次情報を共有し合い、相場形成につなげた。金額を審議する専門部会段階でのいち早い情報の共有が功を奏したという。

     

    ●実額での底上げ目安を

     

     今年の政府の骨太方針に「地域間格差への配慮」が初めて盛り込まれた。しかし、中賃目安はC・Dランクこそ同額だったが、AランクとC・Dの格差を2円広げる不十分な内容だった。全国の地賃改定はさらに当初の想定を覆し、1円の格差縮小という意外な結果を導いた。

     人手不足の折、「単独最下位」は何としても避けたいという地方の切迫感と、各県の労働側の連携が、不十分な目安を補った形だ。

     たかが1円とはいえ、大きな一歩でもある。格差縮小を来年以降、本流にできるかどうか。複数のDランク県の労働側委員は私見と前置きしたうえで「中賃の目安を少なくとも全ランク同額か、C・DランクをAランクより高くしないと格差は縮まらない」と訴える。連合リビングウェイジなど生計費やセーフティーネットのあり方についての踏み込んだ議論が必要だとし、「例えば健康保険料の使用者負担減免など、具体的な中小企業支援策を公益・労使が話し合う場を中央・地方でつくれないか」と話す。