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    業務削減の取り組み、活発に/日教組/教員の働き方改革で集会

     日教組は9月5日、教員の長時間労働解消に向けた討論集会を都内で開き、約200人が参加した。「働き方改革」に関する集会は今回が初めて。業務削減できた実践例などが報告された。

     

    ●学校衛生委員会を活用/岩手県

     

     岩手県教職員組合は労働安全衛生活動に着眼し、体制づくりに取り組んできた。多くの市町村単位で労働安全衛生委員会が開催されるようになると、各小・中学校にも学校衛生委員会の設置が進んだという。

     学校衛生委員を約2年半務めた報告者は「職員会議で運動会について議論しても、健康面を配慮した見直しはされない。衛生委員会だったら、働き方の視点で超勤問題を議論できる」と述べた。

     委員会でまず取り組んだのは時間外勤務の実態調査だ。20時間ごとに月間時間外勤務者の人数を集計し、委員会の通信に一覧表を掲載。(1)40時間未満(2)41~80時間(3)81時間以上に区分し、(3)は医師の面接指導が必要と併記した。「時間外勤務の記録は命を守るため。最初は誰もやらなかったが、通信に載せると、最終的には全員が取り組んだ。データの信ぴょう性も増し、改善のヒントも見えてきた」と振り返った。

     長時間労働の是正には教職員定数の見直しが必要だが、現実は厳しい。それならば業務を削減しようと、(1)廃止・削減(2)整理統合(3)改良進化――の3パターンで、仕分けやスリム化を行い、授業参観や職員会議の回数削減、朝のドリルタイムの廃止、資料の事前配布による会議時間の短縮――などを実現した。

     報告者は、次年度の学校運営計画の策定段階で、業務新設と廃止のスクラップ・アンド・ビルドを盛り込むことが肝要だと力説した。

     「長時間労働の解消といいつつ、小学校では英語が必須になったが、1教科増えるだけで大変。時間をどう確保するかを考えるのが前年度の1、2月だ」と述べ、委員会が業務改善の年間計画を持って、積極的に進めるべきと強調した。

     その上で、「当たり前を変えなければ改革できない。今の学校の当たり前をそれぞれが問い直してほしい。大胆に改革を進めていこう」と呼びかけた。

     

    ●地元紙に意見広告/鹿児島県

     

     働き方改革を進める上で、地域社会や保護者の理解も不可欠だ。鹿児島県教職員組合は2017年、日教組が東京地区の新聞に出した意見広告の抜き刷りをメーデー会場や県内の全教職員らに配布し、長時間労働問題をアピール。すると、地元新聞社が学校の働き方に関心を持ち、取材・報道につながったという。

     社会への発信を強めようと同年12月、県教組自らが意見広告を新聞に掲載した。広告は日教組と同じ様式で、掲載した南日本新聞の教員の働き方問題の記事を使い、市民の声も取り上げた。同新聞の企画で、学校の働き方改革に関するシンポジウムにも発展。街頭でチラシを配布し、参加を呼びかけた。

     報告者によると、当時、県教育委員会による業務改善アクションプランの策定は遅れ気味だったという。広告や報道を生かした世論喚起が策定の追い風になったと手応えを語った。