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    〈雇用類似の現場から〉(3)/泣き寝入りするしかないのか/フリーの報酬未払い問題/ジャーナリスト 北健一

     大工、音楽家、ライター……。雇用ではない形で働く者にとって、報酬(代金)未払いも頭が痛い。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が昨年12月~今年1月に実施した「未払い報酬に関するアンケート」では回答者の実に69・7%が、請け負った仕事の報酬が支払われなかった経験があると回答した(一部未払いを含む)。

     報酬未払いに遭ったときどうしたかとの問いには、「身近な人に相談した」23・9%、「無償・有償を問わず法律相談窓口へ行った」13・8%、「公的機関の相談窓口へ行った」12・8%などがある一方、「泣き寝入りした」が42・2%に上った。理由は、「勝てる見込みがないと感じた」「どうすれば良いかわからなかった」「弁護士費用が負担に感じた」など。雇用労働者の残業代未払いでも泣き寝入りはあるが、雇用類似の場合、相談窓口が少ない(見当たらない)のも泣き寝入りが多くなる一因だろう。

     

    ●立場弱いフリーランス

     

     フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんは「報酬未払いが起きる原因は四つあります」と話す。(1)音信不通(2)契約未締結(3)(発注側の)資金繰り難(4)難癖――だ。

     納品後、突然連絡が取れなくなり、報酬も支払われない(1)はまるで悪夢だが、時々ある。業種にもよるが(2)の契約未締結も背景に多い。未締結でもきちんと支払われることも多いが、未払いの場合、契約がないと回収が難しくなる(ただし口頭でもメールでも契約は成り立つ)。不当な未払いや減額を合理化するため、仕事の出来などに難癖をつける(4)も珍しくない。

     かなりのケースで発注者の資金繰り難(3)が背景にある。資金繰り難に陥った会社は往々にして「怖い順に支払う」ため、立場の弱いフリーランスは後回しにされがちだ。

     

    ●相談窓口の整備を

     

     厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会(鎌田耕一座長)」では、報酬未払いの対応について近く検討に入る。

     損保ジャパンはフリーランス協会と協力し、対応する弁護士費用などを保障する報酬トラブル弁護士保険「フリーガル」を開発した(保険料は年5千円の場合、保険金額50万円)。

     公的相談窓口には下請けかけこみ寺が都道府県ごとにある(0120‐418‐618に電話すると最寄りの窓口につながる)。全建総連や日本音楽家ユニオン、出版ネッツなど一部の労働組合でも、関連業種での報酬未払いの相談に対応している。