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    〈米国ライドシェアの現実〉上/カリフォルニアで保護法制定/運転手が「労組」つくり運動

     「胸が張り裂けそうだ」

     ロサンゼルス空港でウーバーやリフトの運転手たちと接していた組合オルグが、ツイッターでつぶやいた。5・8ライドシェア国際ストの日だったが、ある運転手からこう言われたのだ。

     「今日はストに背を向けて申し訳なかったが、食料を買う金がなかった。12時間働いて142ドル(約1万5300円)稼いだが、半分はガソリン代で消える」

     ロサンゼルス郡の最低賃金(14・25ドル)に満たない収入だが、会社は罰せられない。運転手を独立事業者として働かせているからだ。ウーバーはまた、2年連続で手数料を一方的に引き上げている。家賃が払えなくなり、車中で寝泊まりするものが後を絶たない。同郡だけで10万人がライドシェア運転手として働いている。

     

    ●5千人の組織に急成長

     

     こうした搾取に立ち向かうため、ロサンゼルスでライドシェア運転手連合(LARDU)が誕生したのは昨年のことだ。以前からストを打っていた集団だが、それだけでは運動にならないと、独自の組織化ソフトを開発した。多くの運転手がネット上で仕事の不満を訴えていることに着目し、組合のオルグが電話で事情を聴取できる仕組みをつくったのだ。

     オルグは、接した運転手がどれだけ組合の活動に関心を示したかを判断。「消極的」から「将来のリーダー候補」まで、四つのカテゴリーに振り分ける。連絡を引き続き取りながら、デモやストの際は、この評価に基づいて参加を呼びかける。こうして短期間に5千人のメンバーが参加する組織に成長した。

     この方法は、ライドシェア運転手の権利確立や労働条件の向上に取り組む全米各地のグループから注目され、問い合わせが相次いだ。ここから生まれた交流を基礎とし、ウーバーの株式上場に抗議する国際ストのうねりを築いた。カリフォルニア州議会議員で、インターネットで単発の仕事を受けるギグ労働者の保護を目指す「AB5」法案(解説参照)をつくったゴンザレス議員(民主)は、「ウーバーやリフト運転手の声を代表する組織」とLARDUを評している。(労働ジャーナリスト 丘野進)