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    時の問題/根絶への視点で再考を/パワハラ指針素案の問題点

     職場におけるパワーハラスメントについて、事業主に防止措置を義務付ける法律の指針素案がこのほど、示されました。その内容に関して不十分さや弊害が指摘されています。どんな問題があるのでしょうか?

     まず、「労働者の主観」に配慮すべきとした国会付帯決議の内容が入っていないこと。パワハラの当否を判断する際、素案は「平均的な労働者の感じ方」を基本にするとしていますが、これだけでは不十分。新人や、病休明け、性的少数者など、通常の労働者より傷つきやすい人々が除外されかねません。しかも、被害はこうした人々に集中しがちです。国会軽視という行政の問題に加え、実際の被害に対応できないのです。

     次に救済対象の狭さ。素案は、行為者に対し「抵抗または拒絶できない」関係にある人としています。被害の訴えがあっても、抵抗できるかできないかに問題が矮小(わいしょう)化され、改善が進まなくなる恐れがあります。

     「職場」での行為に限定していることも問題。労働事件に携わる弁護士は「業務終了後にカラオケ店で上司が部下の頭をたたくなどの行為が、適用から外れかねない」と指摘します。

     指針素案のパワハラに該当しない例示には不適切な内容も。「経営上の理由により、一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせること」という例示は、専門性の高い社員に草むしりをさせて退職に追い込む行為を「経営上」正当な行為として促しかねません。

     服装の乱れやマナーを欠いた言動など、問題行動がある労働者には強く注意できると読める例示も不適切です。指導目的でも行き過た言動はハラスメントになるとの判例を踏まえていないと指摘されています。

     被害を根絶する視点での再考が求められます。