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    千円は雇用に悪影響なし/最低賃金で金属労協/生産性向上分の配分こそ必要

     金属労協の理論誌「JCM」の2019秋号が、最低賃金引き上げに関する論考を掲載している。最賃引き上げが必要になっているのは、これまでの生産性向上分がきちんと配分されていないからだと指摘。政府が目標とする「全国加重平均千円」は雇用に影響を及ぼす水準ではない、と主張している。

     「最賃引き上げには生産性向上が必要」という、最近の新聞紙上などで見られる主張について「そもそもこれまでの生産性の向上がきちんと賃金に配分できておらず、付加価値に見合った賃金水準となっていないから最賃の積極的な引き上げが必要になっているわけだから、こうした主張は、少なくとも現状では的外れであるとともに、最賃引き上げの足を引っ張りかねない」と問題点を指摘する。

     雇用への影響にも言及。最賃引き上げによる雇用へのマイナスの影響が出るとされる、平均賃金の6割の水準は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から算出すると時給1120円で、18年度の全国加重平均874円は伸びしろが十分ある点に注意を促す。金属労協が最低限の確保を求める一時金年4カ月分を所定内給与に組み込めば、6割の水準は「1490円強」になることも示し「全国加重平均千円が雇用に打撃を与えるものだとは到底思えない」と反論している。

      中小企業団体の反発とは裏腹に、中小企業の計6割が2018年度の最賃引き上げ額を「妥当」「低い」と考えているとの調査結果や、売上に対する人件費負担が中小企業でも低下しているデータを紹介。学生を含む多くの人が生計維持のために働いている現状などを指摘し、最賃の引き上げを求めている。