「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    安心社会への道筋探る/連合30周年シンポジウム

     連合は11月12日、「私たちが未来を変える」と題した結成30周年記念シンポジウムを都内で開き、「安心社会」実現への道筋を話し合った。2035年の目指すべき日本社会像を示す「連合ビジョン」への辛口の意見も寄せられた。

     パネル討論のテーマは、未来を変えるための労働組合の役割と連携のあり方。経団連や地方連合会の代表、学者、地方議員が出席した。

     経団連の吉村隆産業技術本部長は、人工知能などデジタル技術革新「Society5・0」の進展を見据え、「長期雇用の利点を生かしつつ、多様な生き方やニーズ、価値観に対応した多様な雇用のあり方を労使で議論を深める必要がある」との考えを表明。社会のありようについても「根本的に変わる可能性がある。技術革新をポジティブに捉え、新しい社会をどうつくるかの分岐点にある。労使は(認識を)共有できる」と述べた。

     一方、社会学者の西田亮介東京工業大学准教授は、この30年間で消費税が10%になるなど労働者の負担感の増大や、引き下げられてきた法人税の課税強化、欧州並みの労働時間短縮が必要との持論を展開した。

     労使関係論が専門の首藤若菜立教大学教授も「経団連の姿勢には強い疑問を感じる」と発言。1995年の旧日経連(現経団連)の労務政策指針「新時代の日本的経営」以降、賃金は低下し、非正規労働者が急増した半面、内部留保が激増した弊害を指摘。パネリスト同士が、激しく応酬する一幕もあった。

     進行役の相原康伸事務局長は、労使を含め多様な立場の人が政策決定に参加する「ソーシャルダイアログ(社会対話)」が重要だと指摘。一連のやり取りを受け「どういう社会をつくっていくのか、労使の隔たりはない。日本で生まれた人を含め多くの人がいかに社会をつくるのか」と社会対話の必要性を強調した。

     

    〈写真〉連合30周年シンポでは、大企業の社会的責任をめぐり厳しい応酬が交わされる一幕も(11月12日、都内)