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    〈過労死白書のリアル・建設の現場監督〉上/長時間労働が日常化/工期変更の対応、深夜まで

     厚生労働省の「過労死等防止対策白書(2019年版)」は、長時間労働の実態がある業種の一つとして建設業を取り上げている。労災認定事案を調べたところ、現場監督の自殺事案が多く、長時間労働や業務量の多さがストレス要因になっているという。実際はどうなのか、派遣労働者として2年前まで大手ゼネコンの現場監督の業務に従事していた森山久志さん(仮名・50代)を取材した。

     

    ●休日は泥のように眠る

     

     森山さんの当時のタイムスケジュールを見てほしい。朝5時に電車に乗り、帰宅は午後9時半ごろ。時には午前様だ(表)。

     「始発に乗って、終電で帰る日も多く、寝袋を持ち込み泊まり込むこともあった。パソコンの稼動時刻で労働時間が管理されていたが、ゼネコンの現場所長に『残業するな』と言われるため、パソコンの電源を落としてから書類の印刷などを行っていた。深夜の事務所で5~10人の現場監督が残業している状態だった」という。

     休日は「基本的に日曜日は休みだったが、出かける気力も体力もなく、ただただ泥のように眠っていた」。

     

    ●柱を50本以上確認

     

     現場監督は、元請けが設定した工期通りに工事が進んでいるか管理し、職人に指示するのが主な仕事だ。仕事は煩雑で多岐にわたる。

     現場監督は複数いて、鉄筋やコンクリート打設、内装など担当ごとに分かれている。「鉄筋担当だと、図面通りに鉄筋が組まれているか、鉄筋が重なる部分の長さや間隔、組み方など細かい規定に基づいて点検する。1日に柱50本以上を確認することもざらだ」という。

     外国人労働者など図面が読めない職人も多く、内容を作業箇所にチョークなどで書いて説明。職人が作業を終えると、図面通りか確認する。これを何度も繰り返す。日中に事務所に戻る余裕はない。

     

    ●工期変更により忙殺

     

     建設業は野外の仕事が多く、雨などの天候に左右される。小さなものを含め労災事故も日々起こる。工期が予定通り進まないのは日常茶飯事だ。そもそも無理な工期設定に加え、作業が止まりがちで、工程表を組み直す毎日だという。

     大手ゼネコンの現場では業種が細分化されており、延べ約50業種、2千人規模の建設職人が出入りする。

     雨が続いた場合、職人は鉄筋を組む仕事ができず工事が遅れる。鉄筋を組む作業の後には型枠大工(コンクリートを流し込む枠を作る大工)や圧送工(生コン業)、電工(電気配線)、ガス配管工などの仕事が控えていて、業者ごとに日程を調整し、それに伴う資材の搬入日時を変更しなければならなくなる。

     「工期変更に合わせて、下請け業者に『工期が遅れているので(現場に)入る日をずらしてくれ』『(工期圧縮のために)職人を増やしてくれ』などと電話をかけて調整する。それだけで夕方から深夜までかかる。業者は直前の連絡に『今から何、言ってんだ!』と怒るし、業者の要望を聞きながら工程表を再度見直し、提案する。若い現場監督は大変だと思う」