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    労働時評/連合が「総対話」まとめる/深刻な実情と連合への期待

     連合は結成30年を迎え、全ての産別・地方連合会95組織との「総対話活動」の報告をこのほどまとめた。組合が直面している困難や連合への要望などが浮き彫りとなっており、「運動の宝」と神津里季生会長は語っている。労働界に共通した課題もあり、総対話のポイントに焦点を当てた。

     

    ●深刻な組織力量の低下

     

     「総対話」は2018年1月から1年余をかけ実施。テーマは連合運動のビジョンや人口減少社会の問題、組織強化などである。

     産別、地方からは「労働運動に危機感を」(フード連合)など職場、地域の組合活動について深刻な問題が多く出された。「単組の力が落ち、産別でフォローしなければならない」(JAM)、「労組の存在価値は低下している」(情報労連)、「職場の組合員は疲れ、運動は活性化していない」(佐賀)、「労働運動やストを知らない若い人が増えている」(秋田、福岡)などが出されている。

     「産別の専従者が減少し会議出席も厳しい」「単組役員のなり手不足」など日常活動の困難さも、滋賀、富山、広島、大分、宮崎などから出されている。

     連合には約260の地域協議会があるが、事態は深刻だ。「単組の専従役員が減り、地協は担い手不足」などの声が、電力総連、JEC連合、千葉、岐阜など多くの地方から共通して出され、「活動の集中と選択を」(JP労組、東京、大阪)との要望があった。

     

    ●地方ほど人手不足深刻

     

     連合は昨年、「人口減少・超少子高齢化社会ビジョン」を発表。総対話でも人口減少と人手不足、外国人労働の問題が出された。「自動車の販売台数減」(石川、岩手)、「郵便局の利用者が減少」(和歌山)、「学校の統廃合」(日教組)など深刻だ。

     人手不足では、JR連合が「線路補修などで課題。技術革新以前に今すぐどうにかしてほしい」とし、山形、千葉、滋賀、愛媛など各地方組織も問題視する。

     外国人労働者への依存も進む。「競走馬の牧場作業で外国人労働者が急増」(全競労)、「製造業でも2~3割を占める」(宮崎)などの声は、福島、埼玉、神奈川からも出された。「外国人労働者の対応で方針を」(基幹労連、JAM)との要望もある。

     「最低賃金が低く、青年だけでなく外国人労働者も県外に流出」(高知)など人口流出の報告も目立つ。

     

    ●技術革新への不安多く

     

     人工知能(AI)については「活用の期待と雇用不安」(サービス連合)などが共通して出され、政労使による対策強化を要望。関連する発言は、自動車総連、情報、電力、JEC、運輸労連、損保労連、紙パ連合、全電線、印刷労連、全国ガス、農団労、自治労、日教組、国公連合、愛知、滋賀、香川など多数。

     「AIでは大手と中小、技能などで二極化の懸念」(ゴム、生保)なども報告され、「雇用類似の働き方の保護」についてもUAゼンセン、大阪などが指摘している。第4次産業革命による産業構造の変化と複合産別化で「産別統合も進むのではないか」(熊本)との見通しも示されている。

     

    ●政権との姿勢で二分

     

     連合と政治との関係について、幅広い意見が表明されているのも特徴だ。

     「平和と憲法改正問題で社会的な発信を」と、自治労、JR総連、大分などが要望。一方、UAゼンセンは「アジアを含め、防衛問題でもう少し示せないか」と踏み込みを求めている。

     政党との関係では、「安倍総理退陣の運動を」(島根)、「政権を担う運動を」(北海道)、「野党共闘を」(運輸、山梨)などの一方、「自民党を含む政党支持の検討も」(海員組合)との意見もあった。

     政策実現力では「地方議員の減少」(愛媛、宮崎)などの事態が進行。「全ての地協に政治センター設置を」(鹿児島)なども提言されている。

     

    ●連合運動へ注文相次ぐ

     

     連合への要望では、「働く者、国民から共感を得られる運動を」(ゼンセン、電機)、「企業内組合の弊害是正を」(JAM)、「もっと組合員のためになる運動を」(ゴム)、「怒りの結集を」(日教組)、「社会の不条理に立ち向かう運動を」(JEC)、「運動の総括・検証を」(電機、私鉄総連、岡山)など。運動面では、「全国で大衆行動を」(全国ユニオン)、「政策実現には動員が必要」(ガス)、「目に見える大衆運動を」(三重)との要望が示された。

     春闘をめぐっては「親企業の賃上げ原資の一部をグループ会社の賃上げ原資へ配分の検討を」(静岡)、「公正分配へ産業の賃金水準、賃上げ率の公表を」(群馬)、「個別賃金実態調査データの集約と活用の推進を」(岐阜)、「人材確保へ春闘で連合の求心力強化を」(ガス、青森)などが多くの産別、地方から表明されている。

     

    ●課題解決へ行動力を

     

     連合の「総対話活動」は笹森清会長時代の01年から始まり、パート労働者の処遇改善を重視。15年には古賀伸明会長が47都道府県で総対話を行い、職場活動停滞の深刻さを示した。03年には、外部の有識者でつくる連合評価委員会が「企業別組合の弱点克服と産別強化」「社会との連帯」などを連合に提言している。

     今回も多くの課題と要望が出された。連合は総対話について「外部の評価と異なり、内部からの評価。貴重な財産であり、運動に生かす」としている。

     連合結成から30年。「連合ビジョン」を確立し、集団的労使関係の拡大を掲げた。山積する課題解決へ連合の行動力が問われている。(ジャーナリスト 鹿田勝一)