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    読み書きできないと就労困難/上智大学でシンポ/移民女性らが実体験語る

     上智大学グローバル・コンサーン研究所は11月16日、移民女性の日本語習得と労働に焦点を当てたシンポジウムを開いた。日本語の読み書きができなければ、就労などの社会生活が困難という実体験が当事者から語られた。

     

    ●自動車免許を取得

     

     タイの農村で育った山崎パチャラーさんは、出稼ぎ先のバンコクで出会った日本人男性と結婚、来日した。ところが、夫は「ばかにされる」という理由で近所付き合いを禁止。行動を毎日監視された。

     「子どもの送り迎えを口実に、運転免許を取得して働きに出たかった。夫は教科書が読めるのなら、教習所に通ってもいいと言った。知人から譲ってもらった運転免許の教本で独学した」と振り返った。

     教習所に1カ月間通い、学科試験も好成績でパスした。「(夫やしゅうとめから)やっと逃げられると大声で泣いた」

     免許取得後、仕事に就いたが、酒に溺れた夫の暴力から逃れるため、子どもたちを連れて外国人女性の保護施設に避難した。地域の人の支えもあって、永住許可を得ることができた。

     山崎さんは日本語学校に通っていない。ホームヘルパーの資格取得やパソコン教室で日本語を学んだという。読み書き強化のための日本語検定も独学で取得した。現在は自治体の非常勤職員として働く傍ら、自身と同じように国際結婚でドメスティックバイオレンス(DV)に遭った女性や子どもの支援団体でも活動している。

     日本の暮らしの中で排除や排外を感じるかと質問されると、「外国人という言葉を変えたい。移民や移住でいいのではないでしょうか」と答えた。

     

    ●漢字が一番難しい

     

     フィリピン出身の戎香里菜さんは、幼い頃から虐待を受け、親戚の間をたらい回しにされて育った。自動車工場で月30万円稼げるという甘い言葉に誘われて来日した。ところが、実際の仕事は水商売。人気がなくなれば、買売春させられると知り、逃げ出した。少しずつ生活を立て直し、職場の建設現場で知り合った日本人男性と結婚。子どもの通う学校が縁で、自治体の多文化共生サポーターに就いた。

     「私の人生がそこから変わった。フィリピンの文化や料理を紹介したが、日本語は不自由なまま。最初は自力でひらがなやカタカナをこつこつ勉強した。漢字が一番難しい」

     読み書きができなければ、安定した職に就けない。子育てと仕事を両立させながら、夜間中学校と定時制高校を卒業。現在は建設の専門学校に通う。

     働くうちに新たな壁になったのが専門用語の難しさだ。「(仕事に関する)技能講習を受けても、日本語が読めないと理解できない。試験は漢字ばかりの問題で、時間内に回答を書かなければならない」と苦労を語った。

     日本語学習の意義を力説する一方、賃貸契約を断られるなど、日本社会で暮らすことの不自由さも感じているという。「私たちも日本で働き、税金を払っているのに、住みにくい。選挙権だけでも権利を与えてほしい」と訴えた。