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    「3千円」・「3千円以上」/2年サイクルの賃上げ要求/基幹労連の20春闘基本構想

     鉄鋼、造船重機、非鉄金属、建設の労組でつくる基幹労連は12月5、6の両日、2020春季取り組み方針の基本構想について話し合う討論集会を滋賀県内で開催した。20年度は3千円、21年度は3千円以上――の賃上げを要求する構想について話し合った。

     

    ●「ここ一番の交渉に」

     

     基幹労連は、産別全体で賃上げを行う年と、中小企業労組の格差是正を支援する年の2年サイクルの取り組みが特徴。20年は全体で賃上げを求める年となる。03年の結成以来、2年分を要求し2年分の回答を引き出してきたが、18闘争以降、業種・部門ごとに単年度での要求・回答を認めている。

     この日提案された要求額は3千円が基軸。3500円としていた18年度から要求額を引き下げた。

     神田健一委員長は、米中の貿易問題など14闘争以降の6年間で最も厳しい交渉環境にあると指摘し、「厳しいことを承知の上でやらなければならない。日本経済の自律的発展と消費マインドの向上、優秀な人材の確保、今働いている仲間の活力を維持・向上させるためにも、ここ一番の交渉となる」と、組合の役割を強調した。

     要求水準を下げたことについては「3500円は基幹労連の賃金水準に照らしたミニミマムの水準。厳しい環境を見据え、業種別(中小)労組、グループ関連企業労組の処遇改善を後押しし得る、ぎりぎり許容できる範囲として3千円とした」と説明した。

     その上で、「それでも会社は『厳しい』と言うだろう。出せない理屈を並べるのではなく、どうしたら出せるのかと、求めていかなければならない」と語った。

     基本構想は、企業内最低賃金協定について、金属労協の方針を踏まえ、月額17万7千円程度(時間当たり1100円程度)を中期目標に据え、そこへの到達を提案している。21年度からの65歳定年延長制創設も引き続き重視する課題だ。

     

    ●人手不足を前面に

     

     討論では、業績動向について「中国や韓国の安値受注で各社、非常に厳しい状況にある」(造船)、「海外市況の縮小の影響を受け非常に厳しい状況」(鉄鋼)などの意見が相次いだ。賃上げについては、「本当に基本賃金(の引き上げ)を求めることができるのか、課題意識を持っている」(総合重工)、「収益状況は厳しいが(2年分の賃上げで)複数年協定を結び、関連企業の支援を行うことが必要」(鉄鋼)、「18・7%が赤字世帯。家計を維持できないのは問題だということを訴えていきたい。地域別最賃が上がる中、一律に(賃金を)上げることには企業の抵抗感がある。人手不足を訴えていく必要がある」(非鉄)など、さまざまな意見が示された。

     造船重機の中小組合からは「経営側は3千円の根拠を必ず問うてくる。どう考えるべきか」との質問が出され、津村正男事務局長は「(物価上昇分に生産性向上分を積み上げた)昔とは要求の立て方が違う。賃金改善をしないと、賃上げした企業に比べ見劣りがする。それで人が来てくれるのか。魅力ある労働条件にするため、企業価値を高めるために賃上げが必要だということを訴えていく必要がある」と応じた。

     65歳への定年延長も課題となる。鉄鋼の大手組合は、21年度に60歳に到達する人から65歳に定年延長するための労使協議を行っていると報告。65歳までの一貫した人事制度の設計を労使で検討しているが、退職金の水準をどうするかで、労使の見解が一致していないと述べた。