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    〈インタビュー/中東海域への自衛隊派遣を問う〉上/有志連合参加と実質的に同じ/永山茂樹東海大学教授(憲法学)

     米国とイランの軍事衝突は当面回避されたが、緊張状態は続いている。そんな中で、日本政府は1月11日、海上自衛隊の哨戒機2機を中東海域へ派遣した。今回の自衛隊派遣をどう考えればいいのか、永山茂樹東海大学教授(憲法学)に聞いた。

     

     ――今回の自衛隊派遣をどう捉えていますか?

     永山 日本政府は海上自衛隊派遣について、防衛省設置法に基づく「調査・研究」とし、「ホルムズ海峡やペルシャ湾は(活動範囲に)含まない」と説明しています。しかし、私は米国主導による有志連合に、形式的には参加していなくても、実質的には参加しているのに等しいと思います。

    その理由は、ホルムズ海峡やペルシャ湾の外であっても、部分的に有志連合と活動範囲が重なっていること。もう一つは、自衛隊が集めた情報は、米軍と共有するということです。米軍を経由して有志連合で情報が共有されるのは明らかであり、他国から「有志連合と一体だ」と見られてもやむを得ません。

     ――今、中東地域は安全な状態なのですか?

     イランによるウクライナ国際航空旅客機の誤射事件が起きています。現在のペルシャ湾には米軍の艦船が存在し、各国の兵器も破壊力を増している中、「ミス」によって大惨事が起こる可能性はあります。戦争をしかける状態ではないが「ミス」が起きかねず、それが軍事衝突へのひきがねになりうると思います。

     

    ●まずは「核合意に戻れ」

     

     ――米国とイランはなぜ緊張関係にあるのですか?

     そもそもの発端は、米国が中東地域を支配しようと追求し始めた約30年前、湾岸戦争の頃まで遡ります。私は、ここに緊張関係の大きな原因があると思います。米国はアフガニスタン戦争(01年)やイラク戦争(03年)などで、敵対する勢力に武力行使しましたが、どれもうまくいっていません。

     直近のターニングポイントは18年。米国が一方的に核合意からの離脱を宣言した時です。まずは、米国とイランの緊張関係を解くために「15年の核合意に戻れ」との主張が大事です。

     しかし、緊張関係を解消するためには、それでは不十分です。中東地域にはさまざまで複雑な問題がありますが、そのひとつは、イスラエルが核兵器を持っているのではないかという疑念です。それを米国が容認することに不満を持つ国がたくさんあり、この問題を解決すべきです。

     そんな中、中東地域に限定して、全ての国で核兵器や大量破壊兵器を禁止する条約をつくろうという動きが起きています。国連が後押しして昨年11月には第1回会議を開き、ほとんどの国の参加の下、条約をつくる宣言を全会一致で採択しました。イスラエルと米国はこれを拒んでいます。

     簡単ではありませんが、中東地域限定の核兵器禁止条約制定運動が平和に向けたプロセス、ヒントのひとつになるでしょう。