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    回答判断で柔軟な対応も/電機連合が春闘方針決定/ベア以外の中身も容認

     電機連合(57万人)は1月23~24日、横浜市内で中央委員会を開き、2020春闘の方針を決めた。持続的な経済成長のために賃上げを行う「社会的責任型闘争」を継続。昨年同様、3千円以上のベア要求基準を掲げる。スト権を背景に大手労組が一斉に回答を引き出す産別統一闘争で、回答判断に当たり、ベア以外の中身も容認する方針を明記した。

     野中孝泰委員長はあいさつで、生活不安、雇用不安、将来不安の三つの不安の払拭(ふっしょく)が必要と述べ、賃上げによって内需を拡大し経済の好転を図る社会的責任型闘争の実践を呼びかけた。6年間賃上げを続けてきたものの、可処分所得は世界同時不況(08年)以前の水準に戻らず、実質賃金はマイナス、労働分配率は低下傾向だとし、「生活水準の維持向上を図るためにも継続した賃上げは必須」と強調した。

     方針は開発・設計職について、昨年同様3千円以上の水準引き上げを掲げる。今年は18歳見合いの企業内最低賃金を4千円引き上げて、16万7千円に改善する統一要求を設定。他の金属製造業より見劣りする高卒初任給も4千円の引き上げを求める。

     今回の焦点は、統一闘争の回答で「一定の条件を満たす場合に限り、妥結における柔軟性を認める」と明記したこと。電機連合の春闘は、日立やパナソニックなど大手13労組が、最低限の歯止め基準を設定して先行回答を引き出す。1社でも基準を満たさなければ全体でストや時間外就労拒否に入るという建前だ。この回答の引き出し方をベア以外も認め、幅をもたせる。

     「柔軟性」容認は、労使交渉・協議で経営側から求められた場合の対応策。産別内の上位の一定水準に到達している組合について、賃金項目に限定して認める。他の労働条件を賃金原資に換算して歯止め基準超えを判断することは考えていないという。19闘争で経営側から提案され、その後検討を重ねてきた。

     神保政史書記長は「あくまで賃金だけ。その他の項目は別に協議する」とし、「交渉を前進させるため」と理解を求めた。07年の春闘時に、賃金改善だけでなく、若年層の補正や手当など「賃金体系是正分」の回答を認めた時のようなイメージだと説明している。

     

     〈討論〉厳しい中でも賃上げを

     

     討論では、パナソニックグループ労連が「柔軟性」明記について「人への投資、統一闘争を継続するための重要な内容だ」と賛意を表明。全富士通労連は「今年も難しい交渉が予想される。社会的責任の観点から、構成組織として統一闘争を進め、責任と役割を果たす。連携を強め、波及力の最大化を堅持し皆で前進させたい」と語った。

     日立グループ連合は「外部環境が厳しい中、電機各社は健闘している。人工知能(AI)、ロボティクス、ビッグデータ、5G、自動車のCACE、スマートシティーなど、成長分野への電機産業の貢献は非常に大きい。多少のリセッション(景気後退)は乗り越えられる」と指摘。

     横並び交渉不要論に対しては「日本全体の賃金相場を形成し、中小企業の賃金を底上げする春闘の機能を失うことは日本全体にとってもマイナスだ。世界的に『物価も賃金も安い国』とならないように、労働組合が役割を発揮し、(賃上げの)結果を残すことが求められる」と意義を強調した。

     大手企業グループの傘下に属さない中堅・中小労組の代表(メイテックグループ労連)は「柔軟性」容認方針の相場形成への影響に不安を述べたうえで、賃上げの波及とは無縁の中小、地方労組がまだまだ多いと述べ、本部の指導を強く求めた。