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    春闘を起点に闘い構築へ/自治労中央委/会計年度任用職員制度で議論

     自治労(79万人)は1月30、31の両日、千葉県内で中央委員会を開き、春闘と当面の闘争方針を決めた。春闘を処遇改善、組織強化の取り組みのスタートと位置づけ、定着をめざす。4月に施行される会計年度任用職員制度では、法改正の趣旨に沿わない不十分な内容での条例化が多く報告され、その改善と組織化に取り組むことも確認した。

     「1年のたたかいのスタートは春闘から」。方針はこのことを基本に据え、要求・交渉・妥結の交渉サイクル確立をめざす。

     公務員の賃上げ時期は春ではないが、日本社会全体が賃上げに取り組む春闘期から交渉を重ねることで、賃金の底上げや運用の改善、格差是正をより効果的に進めたい考えだ。そのためにも組合員の声を集めて職場の課題をつかみ、「1単組1要求」を掲げる。

     昨年の大会では、毎年1万人規模で組合員が減り、組合活動も低迷していることから「組織存亡の危機」との認識が示された。春闘期から職場の要求活動を強め、運動の活性化、組織の強化へとつなげる。

     討論で、大分は「確定闘争だけだと単組間格差の解消は実現できない」として春闘期から統一闘争に取り組む意義を強調した。山形は、昨秋の確定闘争で、低下した賃金の回復をめざし7割が単組独自の要求を提出したと報告。賃金実態を調べて賃金の歪みなどの問題を明らかにし、その改善を「譲れない要求」として取り組んでいると述べ、春闘期からの通年の闘争が必要だと語った。

     北海道では「国の住宅手当見直し準拠」阻止の取り組みを昨秋展開した。家賃の低い人ほど負担増になるためだ。92%の単組が要求提出し、多くの組織で国と異なる見直しにつなげたと述べ、「ある単組では青年が切実な訴えを行い当局を動かした。結果として組織強化、担い手育成につながった」と発言。組合員が切実な要求を持ち寄って参加する春闘を展望した。

     

    ●組織化と処遇改善は一体

     

     「官製ワーキングプア」と指摘される、地方自治体の臨時・非常勤職員は4月から会計年度任用職員に変わる。自治労によると、12月議会でほとんどの自治体が条例化を済ませたが、詳細な労働条件が確定していないところも多いという。

     この問題について発言が多く出された。一時金が支給されるようになるが、月例賃金が減額されるケースや、退職手当支給を逃れるパート化、これまで組合が勝ち取ってきた処遇改善を失う苦渋の決断を強いられた事例も報告された。

     改正法の趣旨への無理解もさることながら「当局にとっての最大の不安要因は国の財源確保が不透明なこと」だという。総務省は1738億円を確保したというが、討論ではその水準が十分なのかと疑問を呈す声が複数出された。今後運用の検証が待たれる。

     今後の方向について討論では、「(非正規職員を)組織化している組織は(新制度移行で)いい労働条件を確保している。処遇改善と組織化は表裏一体」(熊本)、「均等・均衡とはほど遠い状況で妥結している。組合の構えも弱かった。今後初任給引き上げや昇給の成果を会計年度任用職員にも適用していくことが必要だ」(神奈川)、「任期の定めのない短時間公務員制度の法制化を」(高知)などの発言があった。

     川本淳委員長は、不十分な内容の自治体については制度発足前の最後の交渉を労使で行わなければならないと述べ、「非正規を含む職員の処遇改善に大きな社会的責任があることを再度自覚し、課題解決にあたってほしい」と呼びかけた。

     

    ●公的病院再編も課題に

     

     国が昨年公表した全国424の公立・公的病院の見直しについて、方針は「拙速な見直しによる病床数削減や再編・統合にならないよう議会などに必要な対策を行う」とした。山口、新潟、石川、北海道が「最大の課題だ」などとして取り組みの強化を要請した。

     相次ぐ激甚災害に対応できる自治体をつくるため、人員確保、技術職員の確保を、岡山や福島、東京が求めた。新潟県などで財政難を理由に賃金削減を提案する自治体が複数発生していることも報告された。

     方針はそのほか、改正給特法で定められた1年単位の変形労働時間制は導入の条例化をさせない取り組みを明記。職員と家族へのマイナンバーカード強制反対や、改憲阻止、脱原発の推進を掲げている。

     

    〈写真〉自治労は、春闘期の取り組みを通じ単組の強化・拡大をめざす(1月31日、千葉県市川市)