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    内部留保批判に踏み出す/神津連合会長/「この積み上がり方は異常だ」

     連合の神津里季生会長が内部留保批判に踏み込んでいる。連合はこれまで、内部留保の積み上がりへの批判には一線を画してきたが、同会長はさまざまな会合で分配構造のゆがみの象徴的な問題として繰り返し指摘している。

     最初の言及は昨年12月の中央委員会。積み上がる内部留保に触れ「(利益が)一部に滞留していることが経済の好循環の妨げになっているのではないか」と問題提起した。

     2月5日には、出身の基幹労連の会合で自身の認識の変化を語った。

     「私が賃金交渉を担当していた時、『内部留保を配分に回せ』という主張は、産業や企業の発展を考えない、私たちとは考え方が違う人たちの得意な領域だった。『そういう主張をするのはやめよう』と戒めていたが、この積み上がり方は異常だ。もっと働く者に配分すべきだと言えるのではないか」

     内部留保をめぐっては、全労連や全労協が早くから指摘していたが、連合とその傘下の組織は冷ややかだった。08年末のリーマンショック時の「派遣切り」の際、膨大な内部留保の活用を求めるべきではとの記者の質問に「内部留保は現金ではなく、設備に形を変えている」とかわす場面も多くあった。

     その後、第2次安倍政権下で、自民党から内部留保を問題視する主張が出始めた。金属労協でも16年、部内の会合で「内部留保問題はもはや左翼だけの主張ではない」と指摘され、連合総研も後に続いた。

     連合は今年の春闘方針で内部留保に言及。同会長は分配構造のゆがみの象徴として指摘し始めている。

     ベア春闘7年目にして、労働界、与野党、一部経済界と、日本経済の行く末を憂慮する人々の認識がそろいつつある。