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    1年変形制の導入阻止訴える/全教大会/改憲阻止の運動も重視

     全日本教職員組合(全教)は2月8、9の両日、都内で大会を開き、来年度の運動方針を決めた。安倍政権による改憲の阻止に力点を置いた運動を重視。長時間過密労働の抜本的解決を目指すとともに、公立学校教員への1年単位の変形労働時間制の導入反対の取り組みを広げる。

     小畑雅子委員長は、1年単位の変形労働時間制の導入を阻止するため、都道府県や政令市レベルでの取り組み強化を表明。「所属組織の違いや組合加入の有無を超えて広く呼びかけている。職場で多数派を形成し、管理職も巻き込んだ議論を起こす絶好のチャンスだ」と語気を強めた。

     

    ●人員増が不可欠

     

     さいたま市では、1カ月単位の変形労働時間制を昨年7月、試験的に実施した。埼玉の代議員は「(所定時間の)1日7時間45分勤務が人間らしい働き方。(現行法で可能な)時間外調整や割り振りをすれば、変形制は必要ない」と訴えた。1年変形制に関する緊急アンケートを実施したところ、8割が導入に反対したという。「長時間労働で過労死や精神疾患を危惧している人が多い。業務削減なくして改革なし。教育委員会との交渉を進め、本当に働きやすい職場を目指して闘う」と表明した。

     愛知の代議員は「1年変形制を導入済みの名古屋大付属中学・高校の教員を学習会に招いた。導入すれば非常に煩雑な事務作業(シフト作成など)が発生し、全ての教員が幸せになる制度ではないと実情を語ってくれた」と報告した。

     その上で、「制度導入には(時間外上限などの)要件が必要。満たしていなければ取りやめになる。条例制定阻止は職場での取り組みになる。全力を挙げる」と力を込めた。

     大阪では、教員の時間外勤務を定めた給特法の施行当時、教育委員会との間で「時間外は月8時間、1回6時間程度」と確認していたことを紹介。昨年3月にも改めて確認し、長時間労働解消に向けた交渉で圧力を強める構えだ。代議員は「他教組の職場でも法改正反対の署名に取り組んだ。組合員の過半数の組織化を目指す」と決意した。

     愛媛で小学校低学年の担任をしている代議員の男性は、認知症の親の介護のため、一時はデイケアサービスの送迎時間帯に合わせる生活を送ったという。「有給の介護休暇の時間単位取得が認められ、授業の1時間目と6時間目を代わってもらった。やはり、代替えの先生は必要。〃せんせいふやそう〃は譲れない取り組みだ。もちろん、1年変形制は導入させない」と述べた。

     

    ●過度な管理が浮き彫りに

     

     教員間のいじめが問題になった兵庫の代議員は、画一的な教育の押し付けが問題の背景にあると指摘した。神戸市の多くの学校では、給食を黙って食べることが強制され、しゃべれば指導対象になる。板書や校内の移動、清掃など、沈黙を強いられる行為は多岐にわたるという。「子どもが落ち着いて見える学級がよい教員(の評価)になる。自由を奪われ、息が詰まるような毎日の中で、豊かな教育を実践できるのか」と問うた。

     事件発覚後、市長は条例を改正し、懲戒処分前に加害教員の給与の差し止めを強行。来年度から民間企業での研修を導入するという。代議員は「学校教育は子どもの人格の完成が目的で利潤追求の企業とは異なる」と憤った。

     岐阜県ではいじめの末、中学校3年生が自殺した。生徒が通っていた学校は県独自の実習校だという。岐阜の代議員は「かなりの人が管理職になる出世コースで、30歳代までの男性教員が多い。パワーハラスメントもあり、長時間過密労働の権化のような存在。子どもに寄り添う視点を身につけられないまま、管理教育になっているのでは」と語った。

     

    ●非正規の処遇改善は急務

     

     4月から非正規職員の多くは新しい人事制度の会計年度任用職員に移行する。その際、正規と同じ日数の有給の療養休暇や任用更新時の空白期間解消などを勝ち取ったという前進面も報告された。

     長野の代議員は、学校職員の非正規化の流れに強い危機感を表明。自身について「適応障害と診断され、20年勤めた講師を秋に辞めた」と告白した。

     「朝はマクドナルド、昼はかっぱ寿司、夜は塾のトリプルワーク。収入は13万ぐらい。社会保険料や年金を払えない」と述べ、非正規職員全体の処遇改善が喫緊の課題だと訴えた。