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    日切れ法案扱いやめるべき/高齢者雇用などの一括法案/全労連など「十分な審議を」

     今通常国会に提出された労働法関連の政府法案について、全労連や自由法曹団などでつくる労働法制中央連絡会が主な改正内容について見解を表明している(表)。「玉石混交」の一括法案であること、年度内成立を急ぐ「日切れ法案」扱いとしていることを批判。各法案を切り離した、十分な審議が必要だと訴えている。

     政府法案は、高齢者雇用安定法や雇用保険法、労災保険法などの改正を束ねた一括法案と、賃金債権の請求権の消滅時効の期間を延ばす労働基準法改正案。いずれも年度内の成立を急ぐ「日切れ法案」であるとして、政府与党はいずれも3月末までの成立を急いでいるという。

     70歳までの就業確保の努力義務を事業主に課す高齢者雇用安定法改正案では、委託契約や有償ボランティアによる「就業確保」を選択肢に含めていることに同連絡会は強い懸念を示す。自由法曹団の鷲見賢一郎弁護士は「雇用と請負をまったく同列にしている。これでは無権利労働者が多く生まれる。労働者の選別条項も入り、残業、最賃、安全衛生の規制や、労災補償も受けられなくなる」と危惧する。

     一方、法案には改善点といえる項目もある。失業給付を受ける際の認定要件の緩和や、自己都合退職者の給付制限短縮などの雇用保険法改正案、複数就労者が労災に遭った場合にそれぞれの賃金を合算して給付金を計算する労災保険改正案などだ。

     鷲見弁護士は「日切れ法案は予算関連や時限法といった一定の根拠があるが、高齢者雇用安定法は日切れ法案でもなんでもない。拙速審議のためのインチキだ」と批判する。

     

    ●改正の効果は3年後

     

     賃金債権などの請求権の消滅時効を変更する労基法改正案では、現行2年間から5年間に拡充するとしつつ、「当分の間、3年間」と留保をつけている。債権の消滅時効を5年とする改正民法(4月施行)に合わせた法改正だが、それを下回ることになる。

     同連絡会の伊藤圭一事務局長(全労連常任幹事)は「民法の一般債権の時効より、労働債権の時効を短くするなど認められない」と批判。政府与党は4月施行を理由に年度内成立を急ぐが、政府案では労基法改正の効果が生じるのは時効が消滅する3年後であり、十分な審議時間を確保すべきと主張している。