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    夏休みはたっぷり30日?/和歌山県教委のパンフが波紋

     長時間労働の実態が明らかになってきたことで、教員志望を諦める学生が少なくない。教員不足は全国で深刻だ。そうした状況を打開しようと、和歌山県が昨年9月に作成したパンフレットが、波紋を広げている。

     「夏休みは、たっぷり30日」――パンフレット表紙のキャッチコピーだ。ネット上では、「詐欺」「誇大広告」「ブラックユーモア」といった批判が教育関係者から相次いでいる。

     中面では公的な統計を基に、待機児童数や刑法犯罪の減少率などを紹介し、和歌山県の暮らしやすさをアピール。同県では有業者の平日の帰宅時刻が全国平均よりも早い18時35分だと強調している。

     独自の勤務実態調査に取り組み、長時間労働を訴えてきた和歌山県教職員組合(全教加盟)は教育委員会との交渉で、「真実に反することを書いて募集するのは、ブラック企業のやり方だ」と批判。宮崎泉教育長は「夏休みが30日取れたらいいのではという思いで作った。和歌山で教員になりたい人を増やしたい」と述べたという。

     夏休み期間中も会議や研修、部活動などがあり、「30日の休み」は到底、不可能だ。とはいえ、組合は本気で目指すなら、業務削減が必要と訴えている。一方で、夏休み期間の休日まとめ取りをうたった1年単位の変形労働時間制への布石とも受け取れるため、警戒を強める。

     川口貴生書記長は「業務を削減すれば年休などで休める。急な生徒対応など、何が起きるかわからない職業に1年単位の変形労働時間制は適用できない制度だ」と強調し、導入阻止に取り組むと語った。