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    時の問題/中小での賃上げが焦点/雇用、経営守る抜本的対策を

     3月19日段階の春闘回答状況は、総じてほぼ前年並みを確保しています。景気減速や新型コロナウイルスによる先行き不透明感が強まる中、低額ながらも共闘による相場形成が図られ、賃上げの流れを維持しました。今後本格化する中小企業の賃上げが焦点です。

     連合の大手先行回答は、ベースアップを含む賃金改善が、自動車と電機で千円以上、造船・総合重工が千円、内需産業のUAゼンセンが2千円台、NTTも2千円を引き出しました。トヨタの「ベアゼロ」など課題も少なくありませんが、共闘による相場形成で2014年以来の賃上げの流れが継続されたことは特筆すべきです。

     全労連など国民春闘共闘委員会の組合では、放送、出版、印刷などが好調で、19日時点での平均はほぼ前年水準となっています。

     新型コロナの問題が広がる中でも、日本経済の好循環実現には賃上げが不可欠だという世論形成を後押しし、個々の労組が粘り強く交渉した結果でしょう。

     この流れを今後の中小の回答につなげられるかが焦点。感染拡大を考えれば早期決着が必要――と、労組関係者は口をそろえます。賃上げを継続し、労使で苦境に立ち向かえる回答を早期に示すよう求めるべきと強調します。

     19年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で7・1%減、5四半期ぶりのマイナスでした。昨年10月の消費税増税の影響とみられます。1月以降も悪化が必至で、個人消費への影響を小さくできるかが問われます。

     今後、懸念されるのは雇用や経営への影響です。一企業の努力で対処しきれない課題の解決には、国の抜本的な対策が必要です。内部留保の活用や、政労使会議の開催などあらゆる方策の検討が求められます。