「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    沖縄レポート/辺野古訴訟に勝つ論理とは/地方自治論だけでは限界も

     新型コロナ禍は世界的悲劇として進行し、医療対策も経済対策も右往左往するばかりの安倍政権だが、名護市辺野古の新基地建設は休むことなく続いている。

     

    ●「関与訴訟」では敗訴

     

     3月26日、辺野古を巡り沖縄県と国の間で争われている訴訟の一つ、「関与取り消し訴訟」で最高裁判決が出され、県敗訴が確定した。翁長雄志前県知事の遺志を受けて県が行った辺野古埋め立て承認撤回に対して、国(沖縄防衛局)が行政不服審査法による審査を請求、国土交通相がこれを認める裁決をした。これは国交相による違法な「関与」であるとして県が起こした訴訟である。

     県の主張は、国の機関である沖縄防衛局が一般私人に成り済まして行政不服審査法に基づいて審査請求し、これを同じ政府内、身内同士の自作自演で認めるのは地方自治の理念に反する、というものだ。100人余の行政法研究者らが連名で県を支持する声明を出し、沖縄のメディアも同趣旨から国を批判してきた。

     判決は、沖縄県の「成り済まし」論を否定し、公有水面埋め立て手続きにおいては、国への「埋め立て承認」も、一般私人への「埋め立て免許」も同じだとする初の判断を示した。

     県と国の裁判闘争では那覇地裁で争っている「抗告訴訟」が本丸とされる。「関与訴訟」は国交相が関わることの是非を問うたのに対し、「抗告訴訟」は国交相の裁決に対して起こすもので、裁決の是非を争う。つまり、埋め立て承認撤回の是非が争点になる。

     

    ●経済発展の視点こそ

     

     私見では、これまでのような地方自治論では勝てない。県は経済発展論に立って主張・立証すべきだ。公有水面埋立法に知事の承認権限があるのは地方自治の理念に基づくというのが県の論理。しかし、公有水面を特定の誰かの陸地にする公有水面埋立法は、経済の論理が本質である。貴重な自然の宝庫である海を埋め立てて軍事基地にすることが、沖縄経済にとってプラスかマイナスか。沖縄本島の2割近い土地が米軍基地で占められ、基地の過重負担が経済発展の阻害要因になっているのに、さらに増やしていいのか。そこを争点にすべきである。(阿波連正一静岡大名誉教授の教示に基づく)

     最高裁判決と同じ日、沖縄県知事が有識者の意見を政策に反映させるために設置した「米軍基地問題に関する万国津梁(ばんこくしんりょう)会議」が知事に提言書を提出した。米軍普天間飛行場問題は、時間も費用もかかる名護市辺野古への移設ではなく、県外・国外へ分散することで段階的に整理縮小させるべきだとした。政治的・軍事的リアリズムを踏まえた内容は説得力を持つはずだ。普天間は返還可能であるということが、沖縄経済論と両輪になるべきであろう。

     

    ●またしても置き去りか

     

     しかし、政府は「辺野古が唯一の選択肢」と言い続け、普天間飛行場の危険性除去は置き去りにしている。

     4月1日、辺野古新基地建設に関する防衛省の有識者会議である「技術検討会」で、説明資料に20カ所ものミスがあったことが明らかになった。秋田のイージス・アショア問題では資料のミスで大臣が地元に謝罪し、計画はいったん「白紙」となった。さて、今度も沖縄はスルーされるのだろうか。(ジャーナリスト 米倉外昭)