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    態度硬化させる使用者側/19年度の特定最賃改定/背景には3%以上の地賃上昇

     2019年度の特定最賃改定では、地域別最賃に追いつかれながらも踏みとどまった業種もあれば、使用者側による問答無用とばかりの対応に涙をのんだ業種もある(表)。背景にあるのは、地域別最賃が3%以上引き上げられたこと。態度を硬化させる傾向は今後も強まることが予想される。20年度の改定は連休明け以降、改定に向けた水面下の動きが活発化する。

     

    ●独自の「千葉ルール」

     

     19年度は全国で7業種が改定の「必要性あり」に至らず、効力を失った。千葉で2件、愛知1件、福井1県、沖縄で3件。

     地域別最賃の改定は8月下旬で、特定最賃の改定よりも早い。この段階で地賃が特定最賃を上回ったことを口実に「特定最賃は存在意義を失った」として改定を認めない事例が2010年代以降増え始めた。金額改定の審議に入る決定は、公益・労・使から1人の反対意見も出ないことが条件だ。

     特定最賃が真っ先に改定されなくなった東京では、地域別最賃に2年連続で追いつかれた業種について、使用者側が改定の必要性を認めない姿勢を取り、神奈川や愛知に広がった。ところが、千葉では18年度の改定以降、1年目で改定の必要性を認めない姿勢を取り始めている。

     18年度は1年目の「調味料製造」「精密機械」が使用者側の反対で改定できずに地賃適用となり、19年度は「一般機械」「自動車小売」が1年目でつぶされた。労働側委員によると、地賃に追いつかれていない業種についても再審議を求めたという。

     愛知は「2年ルール」で改定を拒否されている。18年度は「商品小売」「精密機械」が地賃適用(失効)となり、19年度は「電気機械」が失効した。仮に来年度も地賃が3%上がれば「自動車小売」が飲み込まれ、その次は「一般機械」「自動車製造」にも及びかねない。世界のトヨタの足元で、対応が注目される。

     沖縄での3業種の失効も目を引く。近年、「糖類製造」「自動車小売」「商品小売」が地賃に追いつかれながらも改定を続けてきた。しかし、19年度の改定審議で使用者側が全員、金額審議入りに反対を表明し、改定できず地賃適用となった。

     沖縄経済は新型コロナウイルスの影響が拡大する前はインバウンド需要が旺盛で、求人も地賃(790円)を大幅に上回る900円を超えていたという。地場産業である製糖業の最賃を残すことも訴えたが、「もはや理屈ではなくなっている」と労働側委員は話す。

     19年度は地域別最賃が3%以上、沖縄では3・5%引き上げられた。地賃の急上昇が一部の使用者側委員の姿勢を一層かたくなにしていると考えられる。

     

    ●地賃プラス2割で

     

     踏ん張った地域もある。18年度、たった1人の使用者側委員が反対し、地賃よりも1割以上高い水準だったのに改定できなかった福島の「非鉄金属」。公益、使用者側の説得やとりなしもあり、今年度は改定にこぎ着けた。

     特定最賃の改定に当たっては「審議会は全会一致の議決に至るよう努力をする」という長年踏襲されたルールがある。あまりに乱暴な横紙破りに対し審議会が良識を示した形だ。

     数年にわたって剣が峰に立つ、長野の「印刷」、熊本の「百貨店・総合スーパー」、佐賀の「陶磁器」、福井の「繊維」なども改定を実現。経済団体が中央の動きと一定距離を置く大阪の7業種は今年も全て改定した。

     目を見張るのは、「鉄鋼」の上げ幅の高さだ。大分では32円引き上げて947円に。大分の地賃(790円)を約2割上回る。鋼鉄の特定最賃は「地賃プラス2割」の水準での設定を目指すという古くからの方針に沿って、金額審議では優秀な人材確保や県外への人材流出防止の必要性を使用者側に訴えたという。島根、山口、和歌山、千葉、茨城でも地賃の上昇を上回るか同額の引き上げ幅となっている。