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    最賃改善に向けて力合わせ/北九州市内の地域労組/上部団体の枠越え取り組み

     新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、雇い止めや補償なき休業を余儀なくされ「生活できない」などの相談が労働組合に寄せられている。「災厄が起きるとたちまち路頭に迷う。そんな低賃金を変えなければいけない」――こう語るのは連合傘下の労組や、全労協の地域ユニオンが加盟する北九州共闘センターの竹内俊一議長だ。

     このほど、福岡・北九州市議会に初めて「最低賃金『全国一律1500円以上の実現を求める意見書』の採択を求める陳情書」を提出し、委員会で陳述を行った。全労連に加盟する福岡県労連傘下の地区労連とも連携した取り組みだという。

     

    ●「求めるもの同じなら」

     

     自治労・全国一般福岡地方労働組合の山岡直明委員長は、市議会に陳情書を出すきっかけとなったのは自民党・最低賃金一元化推進議員連盟会長の衛藤征士郎衆院議員が、最賃改善に向けて「地方からの声」を重視していることを知ったからだという。

     同労組が加盟する平和・労働・人権北九州共闘センターと、NPO労働相談センター・雇用アクション福岡との連名で3月6日、陳情書を提出。4月14日、北九州市議会の経済港湾委員会で陳情書が審議された。反対意見はなかったが継続審議となり、本会議には上がらなかった。

     山岡委員長はこう語る。「取り組みはこれから。新型コロナの影響で大変な状況だからこそ、最低賃金の引き上げ、全国一律は重要な課題だ。ナショナルセンターの枠を越えて、(全労連系の)地区労連とも話し合っている。求めるものが同じなら一緒にやる」。

     

    ●市長も前向き姿勢

     

     福岡県労連の地域組織、北九州地区労連の永吉孝一事務局長は、例年、最賃改善を求める意見書を採択するよう市議会に陳情してきた。今年は同趣旨の陳情書が、連合傘下の労組が加盟する共闘センターなどから提出されたことに運動の高まりを感じている。昨年10月から最賃と公契約条例の課題について、共闘センターなどと話し合う場を継続して持ち、それぞれが陳情書を提出することになったという。

     福岡県(Cランク)の2019年度地域別最賃は841円。福岡県労連が18年4月に実施した最低生計費試算調査では、北九州市は公共交通機関が十分ではなく、交通・通信費が月4万円以上必要で、最低生計費を得るには時給1600円以上必要だという結果が示された。今年1月には全労連九州ブロック協議会として、自民党最賃議連の衛藤会長や山本幸三幹事長とも懇談を行っている。

     永吉事務局長は「北橋健治市長も全国市長会で最賃改善について国に要請したと聞いた。審議された委員会では委員長から質問が出て、最賃格差が若者の人口流失を招いていることを市雇用政策課も否定しなかった」。

     

    ●最賃改善、再燃させる

     

     市議会の委員会で陳述した共闘センターの竹内俊一議長は「新型コロナの影響で生活が困窮する人が増えている状況を今後の教訓とするなら、ただちに最賃を引き上げなければいけない。緊急時の備えさえできない低賃金のありようを今一度、考えてほしい」と訴える。

     自民党最賃議連の動きを踏まえ、竹内議長は「山本幸三衆院議員の地元事務所を訪ねて意見交換したい。市議会の委員会では継続審議となったが、(最賃改善の機運を)再燃させたい」と話している。