「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    「強要された退職合意は無効」/マカフィーの女性社員/東京地裁に労働審判申し立て

     コンピューターのセキュリティーソフトなどを販売する外資系企業マカフィーでマネジャーを勤めていたAさん(40代、女性)が5月13日、労働契約上の地位確認などを求め、東京地方裁判所に労働審判を申し立てた。強要されて署名した退職確認書は無効と訴え、慰謝料など約1600万円を請求した。

     Aさんは、米国の大学を卒業後、日本の複数の会社で営業職として勤務。同社には2017年に入社し、営業部門のマネジャーとして働いていた。年俸は1050万円で、売り上げ達成に応じた歩合給が四半期ごとに別途、支払われた。

     昨年9月、業務に関する個人面談を受けていたところ、上司2人が突然現れ、3時間近く退職強要を受けた。上司はAさんが給料に実績が伴わない低業績であり、働き続けるのは「お互いにハッピーにならない」と切り出し、退職を促したという。Aさんは返事を翌日まで待ってほしいと繰り返し訴えたが、「受けなければ通常の解雇になり、パッケージ(退職金上乗せ)はなくなる」などと言われ、密室であることへの恐怖も感じて、退職確認書に署名したと話している。

     会見で原告代理人の指宿昭一弁護士は「退職強要の相談が昨年あたりから増えている。当事者を複数で長時間囲み(返事を)持ち帰らせず、離席や外部への相談を許さないという手法が共通」と指摘した。

     外資系企業では不祥事を未然に防ぐ目的で、職歴や民事訴訟の履歴などを事前に調べる「バックグラウンドチェック」が行われる。Aさんは「10年程度さかのぼってチェックする会社が多い。解雇のレッテルを貼られると、転職が難しくなると思い、サインしてしまう。同じような目に遭った人は他にもいるのではないか」と語った。