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    条例で労働法を無効化?/インドの州で相次ぐ/新型コロナに便乗した暴挙

     インドで、労働法を無効とする条例や行政命令を発する州が相次いでいる。コロナ禍から速やかに事業を回復させたい経営者団体の意向を露骨に反映した前代未聞の事態だ。全国ロックダウン(都市封鎖)に便乗して、28州のうち10州がこの間、8時間の法定労働時間を12時間に延ばしたが、これに続く反動的な動きだ。国際労働機関(ILO)は、モディ首相に強い懸念を示し、法令順守を求めた。

     北部のウッタル・プラデーシュ州では5月6日、38ある労働法のほぼ全てがこの先、千日間無効となった。失効期間を無期限としたり、労働者の解雇を容易にした上で争議行為を禁止したりした州や、4時間延長された労働時間の補償を不要とした州もある。現在7州へ広がっているが、モディ首相率いる極右のインド人民党(BJP)が州議会を握っている場合が多い。

     反対運動を強める労働連盟(HMS)や全国労働会議(INTUC)など10の労組ナショナルセンターは共同声明を出し、「労働者の権利が、英国統治時代に逆戻りするようなことは認められない」と訴えた。22日には全国統一行動を実現し、1日ハンストを含めた抗議行動を各地で展開。国際労働組合総連合(ITUC)などもインド労働界への連帯を表明している。

     こうした中、ウッタル・プラデーシュ州は、高等裁判所の判決を受け、労働時間の延長を撤回した。一方、隣国スリランカでも、経営者団体がコロナ禍を口実に、労働協約の凍結や見直しを唱え、労働組合が反対している。(労働ジャーナリスト 丘野進)