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    引き上げ凍結論に異論続々/最賃をめぐる動き/労組・法律家・与野党から

     新型コロナウイルス感染症の影響で経済が停滞する中、今年度の地域別最低賃金の改定審議が行われる。日本商工会議所など中小企業3団体が4月、早々に「引き上げの凍結」を含む中小企業への配慮を求め、安倍首相も6月、それに応じるかのような発言を行った。こうした動きへの異論が出始めている。

     政府は近年、6月に出す「骨太方針」で最賃の政策目標を示し、それに「配意」した改定審議が中央最低賃金審議会で行われてきた。今年の骨太方針は1カ月程度遅れるという。安倍首相は、6月3日開かれた全世代型社会保障検討会議で最賃に言及。「より早期に全国加重平均千円」の方針を堅持するとした上で、中小企業の厳しい現状を考慮するよう求めた。

     これに対し、連合の神津里季生会長は同会議で「こうした状況だからこそ長年の格差拡大や、労働者の生計費や賃金の状況を直視する必要がある。改善に向けた歩みは止めるべきではない」と発言したという。

     日本弁護士連合会は同日、「労働者の生活を守り、新型コロナに向き合いながら経済を活性化させるためにも最賃引き上げを後退させてはならない」との荒中(あら・ただし)会長声明を発表した。

     全労連が6月11日に開いた院内集会には与野党20人超の国会議員が参加。非正規労働が生活苦に直結しているなどと述べ、「コロナ禍の今だからこそ引き上げを」と訴えた。同日の自民党最賃議連も、デフレ脱却のために将来を見据えた最賃引き上げを訴える緊急提言をまとめた。党幹部や首相官邸に要請し英断を求める。

     英国では4月、コロナ禍でも過去最高の6%引き上げを実行した。今年は中央最賃審での改定審議が例年以上に注目される。