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    〈全労働のレポート〉上/労働時間把握の義務化こそ/過重労働の解消に向け提言

     労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)などの職員でつくる全労働省労組(全労働)がこのほど、「過重労働の解消に向けた効果的な行政手法と法整備」と題するレポートをまとめた。働き方改革関連法(2018年6月成立、順次施行)が実施段階に入る中、目玉の過重労働防止を進める上で何が必要かを提言している。立法措置では労働時間把握の罰則付き義務化を挙げた。

     レポートは、全労働が取り組んでいる労働行政研究活動の一環。昨年7月に行った監督官アンケート(1053人が回答)の結果を分析し、あるべき方向を提起した。今後、各職場で討議し、補強と実現を目指していくという。

     

    ●現状では立件も困難

     

     労働基準法は1日8時間・週40時間の法定労働時間を定め、それを超える分について使用者に割増賃金の支払いを義務付けている。

     しかし、労働現場では長時間労働や不払い残業が横行し、過労死も後を絶たない。レポートはその大きな要因について「労働時間が適正に把握されておらず法違反の有無を判断する材料を欠くケース」が少なくないためと指摘。労働時間把握を怠ることで、規制を逃れようとする使用者の「逃げ得」につながっていることも否定できないという。

     働き方改革関連法(改正労働安全衛生法)は「労働時間の状況」の把握義務を規定。タイムカードやパソコン記録などの客観的な方法も指示した。この措置についてレポートは一定評価しつつ、問題もあるとして(1)把握対象が労働時間ではなく、事情によって食事時間などを含めることができる「労働時間の状況」となっている(2)把握義務違反に罰則がついていない――の2点を挙げている。

     食事時間などを含む「労働時間の状況」だとなぜ不十分なのか。森崎巌副委員長は「近年の刑事訴訟の実務上の問題がある。毎日の始終業時刻と休憩時間の開始・終了時刻を特定できなければ、立件することさえできない」と説明する。

     そのためレポートは、監督官の意向を踏まえ、労働時間の把握・記録義務を罰則付きで定めることが不可欠と提起した。

     

    ●上限設定は週単位で

     

     働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、時間外労働時間に初めて上限が設けられた。

     月45時間・年360時間を原則としつつ、(1)臨時的な特別な事情がある場合は年720時間まで可能(2)時間外・休日労働は単月100時間、複数月80時間まで可能――とした。レポートは「時間外労働に絶対上限が定められたことは大きな前進だが、その水準はいわゆる過労死ラインとほぼ同じであり、より実効ある規制(法整備)が求められる」と強調している。

     具体的には、労働時間の上限設定は「週単位とするのが適当」と提起した。「疲労回復や生活サイクルの観点で本来なら1日単位とすべきだが、せめて週単位でどうかということ。月・年単位では長すぎる」と森崎副委員長。併せて、現行の月単位80時間については長すぎるため「60時間程度とし、その後、順次45時間まで引き下げていくのが望ましい」という。(つづく)