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    〈全労働レポート〉中/あいまいな要件の明確化を/「管理監督者の範囲」などが課題

     労働基準法などの違反を取り締まる労働基準監督官にとって、法制上の要件や定義のあいまいさが、悩みの一つになっているという。例えば「管理監督者の範囲」。残業代を支払いたくないために設定する「名ばかり管理職」かどうかの見極めに苦慮するケースが少なくないようだ。

     

    ●本当に管理監督者か?

     

     全労働が過重労働の解消に向けて必要な法整備を尋ねた監督官アンケート(1053人が回答)によると、法令上の要件・定義を明確にしてほしいと感じている項目は(1)管理監督者の範囲(2)労働時間の範囲(3)労働者の範囲――など。

     中でも、68%の監督官が挙げたのが「管理監督者の範囲」である。裁判では、その範囲を厳格に判断する例が少なくないが、労基法では「監督若しくは管理の地位にある者」とだけ規定されているためだ。

     管理監督者だと、労基法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されない。責任を負わせて長時間働かせ、安い管理職手当で済まそうという経営が横行すれば、過重労働の解消は期待できない。

     全労働レポートは「労働時間規制が適用除外となる管理監督者の範囲を必要最小限にとどめ、要件を厳格かつ明確に規定することが適当」と提言している。

     

    ●複雑な労働時間制度

     

     監督官は「労働時間の範囲」についても苦労している。「労働時間」に関する法令上の定義がなく、複雑な要件を伴った除外事由や特例措置が多いため、法違反の立証が困難といわれる。

     全労働の森崎巌副委員長は「例えば、建設事業や自動車運転業務、医師については上限規制の適用が猶予されている。新技術・新商品等の研究開発業務は適用除外。また、常時10人未満の小売業等の法定労働時間はいまだに週44時間だ」。

     抽象的な要件も増えている。専門業務型裁量労働制の基本的な要件である「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」に該当するのか、その判断は極めて困難だという。

     全労働レポートは「労働時間制度(各条文の構成要件)をシンプルな形へと見直せば、これを順守する事業主の予測可能性を高めることにつながる。労働者にとっても、自らの権利を理解し、法令違反の『監視者』として役割を果たしてもらう上で有効」と期待を寄せている。

     

    ●労働者性の判断も困難

     

     もう一つのあいまいさが「労働者」の範囲だ。働いている人が労働基準法を適用すべき労働者なのかの判断に当たって、困難を感じるケースが少なくないという。安倍政権が「雇用によらない働き方」を推奨している時だけに、今後、労働者性の判断を求められることが増えると思われる。

     レポートは「形式的に『雇用契約』でないといった理由から、(労働者が)行政指導を求める入り口にも立てないようでは、労働基準監督機関の存在意義が問われかねない」と危機感を強める。

     その上で、労働者の範囲を見直すなら「裁量労働制など、必ずしも時間的・場所的拘束性が高くない働き方が広がっていることも勘案すべき」と指摘。具体的には、従来の使用従属性の概念にとどまらず、「経済従属性」をもっと重視して労働者概念を構築することが必要と訴えている。