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    「いのち守る署名」を提起/医労連大会/医療・福祉政策の転換目指す

     日本医労連は7月28日、オンラインで大会を開いた。新型コロナウイルス感染症が広がる中、今秋から他団体と共同で「いのち守る国会請願署名(仮称)」に取り組むことを決めた。

     あいさつした森田しのぶ委員長は、新型コロナによって、利益や効率を優先した新自由主義の医療・社会保障政策が抜本的な転換を求められていると指摘。

     「医療・社会保障の拡充を求める国民の声は高まっている。私たちの運動に確信を持ち、憲法を生かして誰もが人間らしく、誇りを持って働き続けられる社会を目指して奮闘しよう」と呼びかけた。

     重点課題の一つとして今秋から新しく取り組む「いのち守る国会請願署名(仮称)」の骨子案が示された。①公立・公的病院の再編・統合の見直しと地域医療体制の充実(2)医療・介護従事者の大幅増員(3)感染症拡大などの不測の事態に対応できる医療福祉の財政確保(4)地域保健衛生施策の拡充⑤社会保障の国民負担軽減――を求める。これまで個別に行ってきた署名を集約した内容で、全労連や中央社会保障推進協議会、医療団体連絡会議と共同で取り組む方向で調整中だ。来年の通常国会での請願採択を目指す。これまで2年間取り組んだ夜勤大幅増員の署名は中止し、新たな署名の「増員」の項目に集約する。

     17年から取り組みをスタートさせた医療・介護労働者の特定最低賃金の新設申し出は、新型コロナの影響で公益委員への要請が困難なことから今年は見送った。取り組みは来年も継続し、全労連の全国一律最賃制実現の運動との相乗効果を狙う。

     

    ●一時金削減を危惧

     

     森田進書記長は、新型コロナによる病院や福祉施設の経営悪化で3分の1の職場が夏の一時金を削減されていると報告。この状況が長引けば、冬季一時金も危ういと懸念を示した。自治体独自の支援策を活用した地方レベルでの運動が欠かせないと強調。「患者減や費用増といった経営の厳しさは労使間の話し合いだけで解決できない。場合によっては(経営側の賛同の下に政治的な要求実現を迫る)〃労使共闘スト〃などの戦術も必要だ」と述べ、「3密」を避けた大衆行動の工夫を含め、秋年末闘争に向けた議論を促した。

     

    ●代議員の決意相次ぐ

     

     全厚労の代議員は、国が進める公的公立病院の再編・統合問題に触れ「組織内の30病院が指名されたが、統廃合済みの病院も含まれるなど、ずさんな計画。職員や地域住民の不安は増している。再編・統合ありきではなく、地域の特性や不測の事態に対応できる医療提供の体制にすべき」と語り、計画の撤回を求めると決意表明した。

     愛知県の代議員は、個人加盟の地域ケアユニオンによる職場の組織化について報告。昨年1年間で109人の増勢になったという。「コロナ禍で相談が急増し、相談者の3割が加入した。7月に常勤医師5人で結成したクリニックの組合では、本俸8%カットを撤回させた」と述べ、新型コロナに便乗した労働条件改悪の広がりを阻止しようと訴えた。

     春闘の1次回答で全9単組が定期昇給分を含めて有額回答を引き出した山形県医労。発言した代議員は「(コロナ禍の)こういう状況だからこそ、賃金水準を下げない経営者と、厳しければ人件費で調整すればいいという経営者で対応の違いが鮮明になった。都市部との賃金格差が埋まらない中、人材確保や離職防止のためにも大幅賃上げの実現は必須」と語気を強めた。