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    長時間労働で疲労蓄積/NPOが教員調査/子どもとの対話に影響を懸念

     NPO法人「共育の杜(もり)」は8月21日、教職員勤務実態調査の速報値を発表した。コロナ禍で業務が増える中、長時間労働や疲労の蓄積が、子どもとの対話などに影響を及ぼす兆しがあると分析。結果を踏まえ、20人以下の少人数学級や消毒作業の民間委託費用の補助などの緊急提言を同日、文部科学省に提出した。

     調査は新型コロナウイルス感染症で緊急事態宣言が出された東京などの7都府県の教職員が対象。7月10日から26日の17日間、ネットで実施した。法人の運営するフェイスブックのグループを中心に協力を呼びかけ、1203人が回答した。

     学校再開後に負担を感じている作業は「校内の消毒作業」(90・1%)、「ソーシャルディスタンスの指導」(88・5%)、「打ち合わせや会議」(80・9%)、「子どもの不安に向き合う」(80・8%)、「学習の遅れを取り戻す」(79・7%)の順で高かった。最近1カ月でストレスや疲労を感じている教職員にどのようなことがあったか尋ねると、「子どもの話をしっかり聞けなくなる」が一番多く、33・7%だった。

     一方、子どもたちの様子については「今後いじめが増える」(88・7%)、「疲れている子、不安な子が増えている」(各87・3%)、「学力格差が拡大する可能性が高い」(86・5%)などが挙げられた。

     同日の会見には横浜市立日枝小学校の住田昌治校長が出席。住田校長は「感染症と熱中症予防に苦慮しながら取り組んでいるが、教職員はストレスや疲労が蓄積し、ゆとりがない。(子どもの見守りで)休憩も取れず、トイレにも行けない状況だ。精神、肉体ともに限界で倒れるのはと心配している」と語った。

     休校による学習の遅れを完全に取り戻そうとする傾向に強い懸念を示した。勤務校では教育課程を再編成し、8割程度に減らしたという。「学校や自治体の工夫次第。(学校に自主的な裁量権がある)カリキュラム・マネジメントをしっかり活用していく。子どもと先生がゆっくり進められる授業で再編成をしなければ、学校や勉強嫌いの子どもを量産してしまうのではないか」と述べ、教育現場に安易な圧力をかけないよう、訴えた。 

     

    ●1年変形の導入は無理

     

     同NPO法人は公立小中学校の教員を対象に1週間当たりの時間外勤務の実態を調査。学校内での時間外勤務(在校等時間)が指針で定める月45時間の上限を超える教員は61・6%と推計された。

     藤川伸治理事長は、1年単位の変形労働時間制の前提条件となる上限を順守できていないと指摘。「感染症の影響もあるが、これが現実だ。1年変形は導入できない。各自治体議会では9月から導入の条例化が議論される。実態を踏まえた検討を」と強調した。

     

    〈写真〉調査結果についてコメントする住田昌治校長(8月21日、都内)