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    副業・兼業の指針改定案了承/労政審/長時間労働の懸念残る

     副業・兼業の環境整備に関する労働政策審議会が8月27日行われ、指針の改定案が了承された。本業と副業の労働時間を通算して、時間外割増賃金や残業上限規制を適用する従来の規制を確認した。一方、労働者の自己申告に頼る仕組みを温存しており、長時間労働の懸念は依然残る。

     厚生労働省は6月、労働者の自己申告を元に、本業と副業の労働時間を通算して、労働時間規制を適用する方向を示した。

     併せて、あらかじめ本業と副業のそれぞれの労働時間の上限を、当該の労働者と本業・副業の使用者との間で定め、労働時間をその範囲内に収めていれば、一方の本業・副業先での実労働時間について、使用者が把握しなくてもいい簡便な方法も定めた。残業があった場合は労働者の自己申告に基づいて、対応することとなる。

     この日の審議で、労働側は「労働時間を通算しないという議論があった中で、通算を明確にしたことは労働者保護の観点から評価する。週40時間、1日8時間以内で収めるべきとの意見が反映されなかったのは残念だが、了承したい」と発言。使用者側は「おおむね賛成。簡便な方法が示された意義は大きい。解禁にちゅうちょする企業を後押しする」と歓迎した。

     審議では、自己申告に基づく方法について「労働者の自己責任とするのは適切ではない」との懸念が労働側から示されていたが、反映されなかった。労働基準法は労働時間について使用者の管理責任を定めているが、厚労省は労使に委ねるという姿勢だ。

      残業上限規制を超えても申告が誤っていれば、企業の責任は問わないと同省は述べている。使用者の責任ではなく、労働者の自己申告としたことに、際限ない長時間労働の懸念が残る。