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    少年移送をタクシーで代替/全司法が問題視/全国で減少する庁用車運転手

     家庭裁判所などで公用車(庁用車)の運転手が配置されない事態が広がり、職員から「非効率」「不安だ」との声が上がっている。公共交通機関の少ない地方では、収容施設への訪問や事件を起こした少年の移送が困難に。当局はタクシーで代替するよう求めるが、現場からは「タクシー会社との契約条項が複雑で業者確保が難しい」「少年の秘匿性を考えると問題がある」といった指摘が相次いでいる。

     庁用車の運転手は「行政職俸給表(二)」の適用を受ける国家公務員。主に技能労務系の職務に従事する職員だ。政府は新行政改革大綱(1983年)によって、翌84年から「行(二)」職員については原則欠員不補充とし、業務を民間に委託してきた。裁判所も同様で、公務員の運転手は年々減少してきたという。

     

    ●日帰り出張も困難に

     

     裁判所職員でつくる全司法労組(国公労連加盟)が機関紙「全司法新聞」(9月5日号)でこの問題を取り上げた。「強まる負担・不安」と題して、今年4月に運転手がゼロになった松江地方・家庭裁判所の状況を、労組の島根支部がレポート。他の地方の意見も載せ、運転手の欠員補充を訴えている。

     それによると、島根県内の家裁調査官は「日帰りの旅程で可能だった出張が難しくなって、宿泊や複数回に分けることを検討する必要が生じ、非効率な職務状況になっている」と指摘する。特に、1日に電車が数本という地方では死活問題だ。「タクシー利用基準では、これまで庁用車を使っていた用務について、全てがタクシー利用できるとは限らない。自転車を使えば時間がかかり、非常に不便になった」「車社会の島根でなぜ運転手がゼロ人になってしまうのか」との意見も。

     全司法の中矢正晴委員長は「収容施設はだいたい不便なところにあり、少年を移送する上で庁用車は不可欠。少年が逃走する恐れやプライバシーへの配慮などもあり、タクシーで代替すればいいという単純な話ではない」と語る。