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    労働時評/新自由主義からの転換訴え/コロナ禍で異例の産別大会

     コロナ禍で今年の組合大会は異例の開催となった。感染防止からオンライン方式となり、連帯感は乏しい。「コロナ後の社会」や来春闘への対応、新党結成と連合産別のきしみなどに焦点を当てた。

     

    ●命と暮らし守る共闘へ

     

     「コロナ後」を展望し、全労連、連合産別とも新自由主義の転換を強調した。新自由主義とは経済的利益を最優先し、過度な競争原理と規制緩和を進め、雇用・賃金・福祉破壊を進める思想のことである。

     全労連は7月の定期大会で「コロナ終息後の社会を展望」とする方針を提起。「新自由主義から転換し、憲法が生きる職場、社会」へ向け、大企業優先から労働者・中小企業中心への政治・経済・財政の抜本的変革を掲げた。小田川義和議長は「多くの国の政府が個人の損失補填(ほてん)を行うという社会主義的な施策」を取ったと指摘。新たに就任した小畑雅子議長は「新自由主義をめぐる政財界とのつばぜりあいの時代。全労連を強め、共闘を拡大させたい」と語った。

     医療崩壊に直面している医労連の大会(7月)で、森田しのぶ委員長は「新自由主義では命と人権が守れないことが浮き彫りになり、医療・社会保障政策の抜本的転換が求められている」と提起。「いのち守る」300万共同署名に取り組むことを決めた。

     国公労連や自治労連、生協労連なども定期大会で「公共サービスの充実」「くらしと雇用を守る政策」など新自由主義からの転換を掲げている。

     

    ●連合も新自由主義批判

     

     連合の神津里季生会長は、野党の合流新党との間でコロナ後の日本の将来ビジョンについて合意したことを評価。8月28日の会見で「新自由主義は大きな災いをもたらしている。合意に新自由主義の転換を込めた」と語った。 

     コロナ後の社会像は「過度な自己責任論、競争万能主義、株主至上主義からの脱却」を掲げ、社会・経済・政治変革など5項目21政策が明記されている。

     産別では、自治労の川本淳委員長が8月の大会で、コロナ禍は「新自由主義的な政策の誤りを改めて示した」と指摘し、公共サービスの充実を訴えた。

     金属労協の高倉明議長も9月の大会で「コロナ禍で市場原理主義の行き過ぎが顕著だ」と指摘し、格差是正を訴えた。

     

    ●「春闘の流れ止めない」

     

     経団連の中西宏明会長は9月7日、来春闘について「コロナに伴う雇用のプレッシャーが重く、従来型の月例賃金という水準論議にいかないのではないか」と、ベア抑制方向だ。

     実質国内総生産(GDP)は年率28%減と予測され、7月の実質消費支出は7%減、休業者は220万人、実質賃金も1・6%減少で5カ月連続低下と深刻だ。

     UAゼンセンの松浦昭彦会長は9月の会見で、21春闘について「組合も雇用は大事にしている。ベアはコロナ禍で業種の違いを考慮したり、格差是正、働き方など労働条件の改善が必要だ」と語った。

     JAMの安河内賢弘会長は8月の大会で「厳しい春闘になるだろうが、容認されざる格差はあり、賃金上昇と個人消費の向上が必要だ。春闘を止めることなく取り組もう」と訴えた。公正取引を重視する方針だ。

     私鉄総連は7月の大会で「人材確保を重視し、定昇・ベアの産別統一闘争・スト権確立」を提起した。

     

    ●「鉄に定昇ゼロはない」

     

     来春闘はベアだけではなく、定期昇給も焦点だ。

     トヨタ労使が一律の定昇を廃止し、完全成果型として、査定が最低なら「定昇ゼロ」と報じられている。現行賃金カーブを維持する定昇にゼロを持ち込めば、それは定昇といえるのかとの疑問も指摘されている。

     一方、鉄鋼や造船など基幹労連の神田健一委員長は9月の会見で定昇のあり方を問われ、「長期蓄積能力型産業として勤続、年齢、習熟などの技能向上と技術継承による定期昇給は、働く者の安心・安定につながり、鉄鋼では定昇ゼロありえない」と表明した。

     自動車総連は9月の大会では21春闘に触れず。電機連合は7月の大会で、統一闘争の「妥結の柔軟性」でベアと手当などの項目を論議の課題に挙げている。

     他方、全労連産別は「コロナに負けない賃上げ」を掲げ、生計費を踏まえた要求や内部留保活用を重視している。JMITUは産別統一ストを軸に設定。会社の決算状況や雇用・労働条件など17項目の企業状況チェックリストに取り組んでいる。

     

    ●合流新党できしみ

     

     新党結成をめぐり連合産別ではきしみが聞こえる。

     今回の再編で、新「立憲民主」は88人から150人に、新「国民」は62人から15人となった。連合の産別組織内議員は衆参で9産別18人。うち原発ゼロなどに反発して「国民」の4産別9人が新「立憲」に参加せず、新「国民」や無所属などに「3分裂」した。

     自動車総連は大会で「選挙目当ての数合わせや大義のない合流だ」として、無所属とした経緯を説明。UAゼンセンは「無所属だが、両党の支援」を決めた。「立憲」の議員を擁する自治労は大会で「新党を評価し、政権交代へ総選挙で新党を中心に野党連携」を訴えた。

     連合は9月15日に談話を発表し、立憲に対し国民議員などとの連携を提起。総選挙では「連合総体として立憲を支援し、一枚岩で対処」するとした。

     総選挙となれば、安倍政権を継承し、自己責任論を強調する菅新政権の暴走阻止が争点。野党と労働界、市民との共闘で政治変革が求められている。(ジャーナリスト・鹿田勝一)