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    インタビュー/〈労組女性リーダーに聞く〉/「今こそ労組を強く大きく」/小畑雅子全労連議長

     7月の全労連大会で議長に選出された。日本の労組ナショナルセンターの歴史上、女性のトップは初めてだ。それから2カ月。労働運動の再生に向けて新議長は何を目指しているのか、その思いを尋ねた。

     

    ●少なくとも3割を女性に

     

     ――初の女性議長誕生への反響はどうでしたか?

     小畑 メディアを含め、全労連内外からすごい反響がありました。真っ先に電話をくれたのは、以前働いていた学校の頑固者の校長で、「大事なことだ。うれしい」と。この人まで喜んでくれるのかとびっくりでした。反応を見ると、「やっと」「とうとう」という受け止めと、「これまでトップに女性がいなかったのか」という驚きの両方ありました。

     私は全教の女性部長時代から、意思決定機関に本当は女性5割、少なくとも3割以上は必要と訴えてきました。残念ながら、全労連もまだ到達できていません。女性が増えたらどう変わるかを形にして見せていくことが大事。労働組合も社会的なジェンダー平等に向け、役割を発揮していかなくてはなりません。

     

    ●男女の格差是正を

     

     ――女性議長として「これだけは実現したい、こだわりたい」という課題は?

     「男は仕事・女は家庭」という性別役割分担意識を変えていきたい。男女の格差の根っこには、今もこれが根強くあります。「女性の仕事は家計補助的だから、賃金は安くていい」という意識です。あらゆる政策にジェンダーの視点を入れ、格差を是正していく。

     特にコロナ禍の下、エッセンシャルワーカーといわれる人々に大きな負荷がかかっています。介護、保育、医療、店舗など、そこで働いているのは非正規・女性が多い。こんな時だからこそ、格差是正を大きく打ち出したい。春闘でもこの課題を戦略的に位置付け、取り組む考えです。

     

    ●全労連結成の原点で

     

     ――全労連結成から30年が経過。つくってよかったと思えることは?

     全労連の行動綱領で三つの原則(資本からの独立、政党からの独立、共通の要求での行動の統一)を堅持することを決めました。運動を進める中でこの原則の大切さを実感してきました。全教でいえば、教育基本法の改悪反対闘争や、最近では1年単位の変形労働時間制の導入問題。子どもや教職員の立場で、要求に基づき、ぶれずに闘う姿勢を貫けたと思います。いずれも、改悪はされましたが、後の闘いに生きる取り組みができたと感じています。

     もう一つは、組織的にも単産と地方・地域組織を大事にして運動してきたことです。特に地域経済の活性化を念頭に取り組んできました。

     例えば、公契約条例や全国一律最低賃金制を目指す運動。地域では賃金を上げると中小企業が困ると言われます。しかし、菅義偉首相が生産性の低い中小企業を淘汰(とうた)する方向を打ち出すもとで、中小企業には必要な支援を行いながら、全ての労働者の賃金を上げること、そのことを通じて地域経済を発展させていく視点こそ大事です。

     この点では、単産と地方・地域が連携した運動スタイルをさらに高めていきたい。

     

    ●150万人との対話へ

     

     ――全労連運動の一番の課題は何でしょうか?

     組織人員が100万人を割り込み、組織力が細ってきました。国民的な要求の実現にとって見過ごせない課題です。この秋の闘いから「全ての要求を実現するため、組織を大きくしよう」と訴えていきます。

     地域で労働組合をつくる実践を重ね、みんなで教訓を共有して運動の好循環につなげていけるかどうかです。例えば「150万人と対話しよう」という方針を打ち出しました。そのためには、従来のように一部の活動家が後継者に対し、オルグ手法などを「口伝」するスタイルではなく、みんなが取り組めるやり方を共有することです。職場での対話の進め方をはじめ、誰もが取り組めるようなテキストや講座が必要でしょう。

     

    ●公務公共サービスこそ

     

     ――今、コロナ禍の下でどんな運動が求められていると思いますか?

     安倍政権をはじめ自公政権が強めた新自由主義政策で、公務・公共サービスが削られてきました。病院や保健所、福祉施設、学校もそうです。しかし、コロナ禍でそうした公務・公共サービスがやはり必要なんだということが、よりはっきりしたのではないでしょうか。

     私たちは以前から公務・公共サービスの拡充を要求してきました。今こそ打って出て、公務・公共サービス拡充へ人員と予算を勝ち取るチャンスです。大きな世論をつくっていく上での正念場にきている、そのことをひしひしと感じます。