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    介護共済を立ち上げ/UAゼンセン/離職防止への一歩に

      国内最大産別のUAゼンセンはこのほど、介護離職を防ぐための専用の共済を立ち上げた。組合員本人と配偶者、両親を保障する。団体型共済で若年層に広く支えてもらうことで、いざという時の安心を確保する。幅広い年齢層、職種の労働者が加入し、連帯意識でつながる労働組合の強みを生かす取り組みだ。

     

    ●他の保険と比べ割安

     

     国の統計によると、2019年の要介護・要支援認定者は659万人。脳卒中や転倒など突然介護状態になった人が約3割に上る。

     介護による離職は年間10万人に迫る。総務省によると、再就職できた割合は半分以下。中高年での離職を余儀なくされるためだ。介護にかかる出費も重く、5年間で500万円に上るとの民間試算もある。

     UAゼンセンは組合員に行った17年の意識調査を踏まえ、「介護離職の防止」を方針化。いざ介護が必要になった時の支えとなる共済づくりを、生保大手の日本生命と進め、このほど制度をスタートさせた(保障は21年3月から)。

     組合員のほか配偶者と双方の両親の最大6人まで加入でき、全員90歳まで保障する。加入者が「要介護2※」の状態になると、給付を受けられる。掛け金は、保障額を100万円とした場合、15~65歳で月290円(団体型で260円)、71~75歳で月960円(同930円)と、他の民間保険や共済と比べ割安の設計だという。

     給付金の受け取り方も、一度に受け取るか、年金のように受け取るか、双方の混合型かを、発症後に選べる。病気の度合いを見て決められるのも、加入者には有利なポイントだ。

     

    ●世代間扶助の考え方

     

     比較的安い掛け金で、手厚く保障できる鍵は、現役の若年層の参加にある。生活応援・共済事業局の長岡英博部長は「加入構造が(若年層ほど加入者が多い)ピラミッド型になる、世代間扶助という社会保障の考え方を取り入れている」と話す。

     採算ラインは18万人(保障額100万円・1口を1人と換算)。企業や組合ごとに加入する「団体型」の普及を目指す。約190万人の組合員を擁し、製造、流通、サービスと幅広い業種が集う組織の特性を生かした仕組みだ。

     掛け金は全額損金算入され、企業の節税対策にもなる。介護保険の対象ではない40歳未満で介護が必要になっても保障するので、全従業員の福利厚生となりうる。突然の介護離職を防ぐことができ、働く意欲向上にもつながるとして、企業に負担を求めていく。

     勘米良(かんめら)晃司局長は「労働運動として展開する。団体型共済を通じ、仕事と介護を両立できる職場づくりを進め、従業員満足度を高めていく意義がある」と話す。

     

    ●一生涯の支え合い

     

     配偶者や親の加入は組合員が独自に上乗せする「個人型」での加入となる。保障額は1人につき最大500万円。

     会社を辞めても「UAゼンセン福祉共済会」(年会費1800円)に加入することで共済を継続できる。団体型から個人型への移行も可能だ。

     ソフト面のケアもある。日本生命との提携で24時間・365日、無料の電話相談サービスを設ける。遠方に住む親の自宅に専門員が訪問して相談に応じることも可能だ。傘下には日本介護クラフトユニオン(8万4千人)があり、その施設の案内も行う。

     今後職場の労働条件改善交渉の一環として加入を進めていく。

     ※要介護2…食事や排せつ、歩行、身だしなみなど日常生活への見守りや介助を必要とする状態